「地球は大気で覆われとる、その通り。ほんで、この大気は幾つかの層に分けられる訳やな。成層圏とか名前聞いたことあるんちゃう?」
「はい。詳しくは知りませんけど、空の高いところ……くらいの意味、ですよね」
「まぁそうね。高度11kmから50kmまで。エベレストよりよっぽど高い所を指す訳や」
あ、でも海面上昇で高さの基準面変わっとるかも知らんな……。と考え込みながらも、チョークを使って、地表と大気圏の間を、さっき雲を分けたように分けていく。
ただ、今度入れられた線の数は5つ。大気圏が、6つの層に分けられたことになる。
「下から、境界層・自由大気・成層圏・中間圏・熱圏・外気圏。
今決められとる気象学上の区分やと、大気っちゅうんは、最大でこの6つに分割できる。
この辺は藤田先生の方が詳しいやろうね」
層ごとに少しずつ大気の性質が違って、例えば、普通高度が上がって大気が薄くなるほど温度は下がっていくけど、成層圏だけは、高いところの方が温度が高くなるとか。
それは、成層圏の上の方にオゾン層があって、そこで紫外線が吸収されて暖められるからだそうだ。
……オゾン層?
「おっと、其処はまだやってなかったっけね」
オゾン。分子記号O3、酸素原子が3つくっついて出来る分子で、強い殺菌作用と紫外線の吸収効果があることで知られている。
オゾン層とは、このオゾンが集まって形成された層のことを指す。
慌てて書き加えられた説明を見て、そういえば温暖化の説明でその単語を聞いたことがあるのを思い出す。
オゾンが太陽から注ぐ紫外線を和らげてくれるお陰で、人間はお天道様の下で生活できるんだ、とかなんとか。これもやっぱり、センセイの授業で聞いたのだったか。
ともかく、こういう訳で、大気は6つの層に分けられる。それは分かった。
「でも、天国は7つに分かれてるんですよね。6つじゃ、1つ足りません」
「その通り。このまんまやと、
「何、って」
今私は、この6つでは足りないと言ったばかりだと思うんだけど。
それとも、7つ目が何なのか、私はもう答えられるということなのだろうか。
ちらりと視線をずらせば、センセイが微かに笑って、私を期待の目で見ていた。
多分、そういうことなのだろう。こういう時は、与えられた材料を元に私自身が考えれば、ちゃんと答えを見つけられるようになっている。
ならば、と、板書の内容を最初から追うことにした。
「うぅん……? あっ」
ずっと見ていって、もう一度地球と大気圏の図を見直して、気づく。
6つに分けられたのは、大気圏内の話だ。大気圏の『外』、それを、もう一つの領域として見做すなら。