kagemiya@なりきり

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Requiem怪文書:第七の空(1) 2019/12/28 (土) 22:47:01

「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教……所謂アブラハムの宗教て呼ばれる中東発祥の宗教には、天国いう概念がある。まぁ影見は多分知っとるやろうけどね」
 カッ、カッ、と、妙にちんまりとしたチョークが、今時珍しい黒板の上を滑っていく。
 白い粉が描いたのは、波立った線に不安定に立つ何人かの棒人間と、その上にふわふわ浮かぶ雲、そして羽の生えた棒人間。
 どうやら、現世と天国を図示しているつもりらしい(……正直ちょっと分かりにくい)。
「この天国っちゅうんは、まぁ宗教ごと宗派ごとに解釈色々あるんやけど、おもろい考え方が一つあってね」
天国を示す雲から矢印を引き、拡大図を書く。6本の横線が描き入れられて、それは7つに分割された。
「一般社会でもオカルト界隈でも、後魔術世界でも、7は力ある数字やて言われるけど、これなんか分かりやすい例やね。
 ユダヤの口伝律法をまとめた書物、タルムードにゃ、天国は7つの領域に分かれとるっちゅう話がある。
 これを、そのまんま7つの天国っちゅうて呼ぶんやな」
 7。
 神が世界を創造するのにかけた時間。仏が生まれて直ぐに刻んだ歩数。ラッキーセブン。虹の色の数。あ、虹の色は国によって数が違うんだっけ。
 でも、確かに色々なものに縁が深い数字だ。連想されるものを指折り数えてみると、案外7という数字にまつわるものは多い。

 7つに分けられた雲に、1つずつ文字が放り込まれる。ラテン・アルファベットじゃない。
 読めないけど、なんとなく、中東地域の言葉っぽさを感じる。それは間違っていなかったようで、これはヘブライ語らしい。
 謎アルファベットに、センセイがカタカナで読み仮名を振り、それでようやく読み仮名が分かるようになった。
 ヴィロン・ラキア・シェハキム・ゼブル・マオン・マコン・アラボト。下から順番に、こんな名前が付いているのだとか。
 しかし、こんなことを急に言い出すなんて、今日の授業は、神学についてやるのだろうか。そういうのは希望した覚えがないけど。
「まぁ、それぞれの天国におる天使とか、宗教宗派による解釈の違いとか、そういうので魔術の解説してもええんやけど、今日はそれとは別の話にしよう」
 違った。でも、此処からどう他の話に広がるというのだろう。
「この、人の常住する場所やない、『あちら側』の世界の区分けね。これ実は、地球の環境にも当てはまったりするんよ」
「……どういう意味です?」
 地球の環境を7つに分ける。大陸は6つだし、7つの海って概念は人間が勝手に分けたものだし、地殻にもそんな沢山層はなかった……と思う。
 はて、なんだろう。
 ウンウン唸って考えてる私を見ながら、センセイは、天国の雲から更に矢印を引いた。
 その先に、ちょっと歪な円弧を描く。この上にも棒人間が立っているあたり、これは多分地球の表面だろう。
「多分、まだ教えてなかったことやと思うから、此処で教えとこか。影見、地球は何で覆われとる?」
「えーと。空気?」
「正解」
 突然聞かれて出てきた当てずっぽうは当たっていたようで、地球の表面から離れたところに、またもう一つの円弧。
 二つの線の間を地球の大気圏として、と、黒板をチョークでトントンと叩いて、説明が始まる。

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