ダンダンダンッと重厚な発射音が「神戸」で鳴り響く。
音の正体は男が持つ銃、AA-12と呼称されるフルオートショットガンの射撃音。
「クソったれが、何時ものことだが今日も鉄クズが湧いてやがる…おい、まだ生きてるか?」
そう言う男の視線の先には、怯えた表情をしながら銃を構えているまだ十代前半と思われる少女が座り込んでいた。
周囲には先程まで戦闘を行っていた形跡があり、いよいよ追い詰められていた様子と言った所だ。
「おいガキ、こんなトコでオネンネしててもいいが早く離れるぞ。直ぐに別の奴が出てくるだろうからな」
男はそう言うと先へ進み始め、慌てて少女は男に追従した。
「お前みたいなガキがなんでこんなトコにいやがる、此処はガキの遊び場じゃねぇんだぞ」
「お前みたいなクソガキは家でママのミルクでも飲んでるのがお似合いだよ」
男の容赦ない言葉を受け、反論する気力もないのか目に涙を浮かべる少女。道中会話は殆どなく、ただ男の悪態を吐く独り言ばかり周囲に響く。
やがて「神戸」の出口付近まで近づき、後はよほど運が悪くなければ脱出できるという所まで辿り着いた。
「オラ着いたぞ、ここまで来ればもう大丈夫だろ、さぁここまでの護衛料を払いな」
男の言葉に少女は驚き、そんな話は聞いていない、ともっともな抗議を行う。しかし男はその言葉に不機嫌そうな表情を見せ、少女に威嚇するかのように大声で怒鳴る。
「お前ここまで俺が居なきゃ死んでだろうがアァ!?俺がどれだけ命がけだったかわからねぇようだなクソガキ!痛い目見ねぇとわからねぇようだな!」
男の剣幕に怯える少女。その時、パンッという発砲音が聞こえると、男の頭から血飛沫が舞った。
普通ならば頭部を撃ち抜かれて死なない人間は存在しない。
しかし、男はまるで何とも無いかのような動きだす。
「チッ、他の回収業者が近くに居やがるな、長居しすぎたぜクソったれ!」
男はそう言うと、凄まじいスピードで走り出した。
常人の何倍も速く走り、あっという間にその場から逃げ出す。
男が逃げ出した直後、数人が少女の元へ駆け寄る。
男の正体は“死に損ない”と呼ばれる違法回収業者だと少女に伝えられた。何もされてなくて本当に良かったと周囲に気遣われながら、少女は無事に保護されたのだった。
「クソったれ、ガキがこんな所に近寄るからこういう目に合うんだよ。今回で身に染みただろ」
“死に損ない”と呼ばれる男はそう言い、不機嫌そうに呟くと、再び「神戸」を歩き始める。
未だ回収されて居ないロストHCUを求めて。