「オい、マスター。腹がへったぞ。はやく食事にシろ、そろそろハンバーガー以外も食わせロ」
何時ものようにギドィルティが空腹を訴えてきた。毎日三食飯を与えているはずなのに腹が減ったと喚いている。
少し前にも腹が減ったといいながら俺の腕を齧っていたがコイツの食欲はどうなっているんだ。
そんなことを考えながら、唐突に今日が何の日だったかふと思い出した。
ハンバーガー以外が食べたいという不満を漏らす声を背に、俺は出かける準備を行う。
「オい、どこ行くンだマスター。腹がへったぞ」
「うるせぇちょっと待ってろ!おとなしく待ってねぇと飯食わさねぇぞ!」
声を荒げながら自身のサーヴァントにそう言い、抗議の視線を感じながら外へ出た。
しばらくしてから戻ってくると、早く飯にしろと言わんばかりの顔のギドィルティが椅子に座って待っていた。
「戻っタかマスター、イい加減腹が減ったぞ。はやく食事にシろ、どうせまたハンバーガーだロ」
ハンバーガーの何が不満なんだよ、と思いながらも抱えていた多数の紙袋をテーブルに置きながら、その中身を取り出していく。
大量のハンバーガー、何時もの食事内容。しかし今日はそれだけではない。
普段買っているハンバーガーのものではない紙袋から、白いクリームやイチゴで彩られたホールケーキを取り出す。
それもひとつだけではなく、様々なフルーツが特徴のホールケーキや、チョコレートケーキなどのホールケーキを多数取り出した。
「オお、なんダなんダ?今日はヤけに食事の量が多イな、ソれに今日はハンバーガー以外モあるナ」
「まぁ…クリスマスだしな、偶にはいいだろ」
「クリスマスか、よくワからんがハンバーガー以外のウマイものを食えルんダな」
ギドィルティはそう言いながら、楽しそうにどれを先に食べるか見定めている。
その様子だけ見ればただの小さな子供のようだな、と思う。
それと同時にもし自身に家族がいて子供がいれば、同じような感じなのだろうかという考えが浮かぶ。
愛する人がいて、愛する子供がいて、そんな普通の幸せな光景。
そんな光景が浮かび、そんな未来は来ないだろうと否定する。
何を勘違いしているのだろうか。俺にはそんな資格はない。俺に普通の幸せなど有り得ない―――
「ああそうダ、マスター。こういうトキに言うコトバがあったな。アリガトなマスター」
突然アイツはそう言うと、何時ものように大きく歯を見せながら笑顔を見せる。
何時もの見慣れた何でもない笑顔ではあったが、何故だが今日はその笑顔につられて自身も笑みを浮かべた。
「クリスマスだからな、偶にはな…」
これはただの気の迷い、だが今は。今だけは。
この気の迷いも悪くはないのかもしれない。
「うんうん、なカなかうまいぞ。りょうガあと1000倍あればいイんだがな」
「は…?おい、もうあれ全部食ったのかよ!ふざけんじゃねぇよ結構高かったんだぞアレ!それを一瞬で食いやがってクソッたれ!」