kagemiya@なりきり

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剣道少女のバスタイム② 1/2 2022/05/09 (月) 13:08:04

結論から言うと、その日の朝稽古は非常に有意義なものになった。

瞳を閉じて昨日を思う。シスターさんから発せられた“気”を回想する。冷静になって解読する。
剣………とは、違う気がする。もっと重い感じ。身が竦むほど大きな岩の塊を投げつけられるイメージ。
洪水の大瀑布のような、私をどうしようもなく飲み込む巨大で圧倒的な存在感。
だが虚像の輪郭さえくっきりと浮かべばシミュレーションはできる。
受けるのは論外。例え握るのが真剣だろうと私ごとぽっきり折られる。躱すか、いなすか。
重厚ではあったが鈍重の印象は無かった。簡単に反撃させてはくれない。ならどうすべきか。
もちろんシスターさんを敵視しているわけではない。むしろ現状では唯一頼れる味方といってもいい。
ただ私の中で彼女が只者ではないことは確信となりつつある。きっとあの“気”は本物だ。稽古の相手としてはこの上ない。
今までにない仮想敵を設定しての素振りは驚くほど身が入った。自分の置かれた状況をも忘れるほどに。
そして励めば励むほどシスターさんへの「興味」はむくむくと膨れ上がっていく。
どれほど強いのだろう。どんな道のりを歩いてきたのだろう。───何者なのだろう。

けれど汗まみれで稽古を終えてみると洒落にならない問題が浮上する。
それはこの非日常にあってどうしようもなく日常的な支障だった。

「服、足りないな………。他のものも………どうしよう………」

シャワーを浴びて風呂に浸かろうと脱衣所を目指しながらぼそりと呟く。
まさかこんなことになるなんて思っていなかったから服や日用品の間に合わせが足りなくなってきた。
制服と剣道着と、あとは寝間着くらいしか持ってきていないのだ。稽古のたびに替えることを考えると下着も不足している。
他にも1日や2日程度ならば無くても無視できるものがここに来て気になり始めていた。

「誰もいないお店でお金のこと気にするのもしょうもないけど、かといって泥棒するわけにもなぁ………」

勝手に持っていくのは私の常識と良心が認め難い。だが背に腹は代えられない。
仕方ない。お金と一緒に一筆書いておけば支払ったことになるだろう。幸い手持ちはもしもに備えて両親が持たせてくれた分がそれなりにある。
すべきことは“戦い”の痕跡の捜索と調査だが、加えて生活に必要なものを揃えられるお店探しも並行することにしよう。
今日の探索の予定を頭の中で組み立てながら脱衣所の扉を開い、て………。

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