剣道少女のバスタイム 3/3
2022/05/09 (月) 03:03:42
夜更け。ベッドの中で数時間前の出来事を思い返す。
いや、出来ることならば思い返したくない事ではあるが……ふと一つの疑問が思い浮かんでしまったのだ。
シスターさんの“気”は並々ならぬものである。
明確にその“気”を向けなくとも、ある程度武術を嗜む者であれば独特な気配を感じ取ることが出来るだろう。
事実、修練中のあの一件以前からシスターさんに対しては……普通の人とは異なる雰囲気を覚えていた。
けれど、あの時はその気配が微塵も感じられなかった。“気”のみならず、普段の気配すらも存在しなかった。
言うならば気配を殺していたかのように────彼女という存在に気が付くことが出来なかった。
“気”で相手を飲み込むだけに留まらず、逆に“気”を完全に消すことも出来る……?
だとすれば。あの人は私に悟られぬように動くことも出来るはずだ。先程の一瞬のように。
例えば…………そうだ。こっそりと抜け出した私を、尾行して監視することだって………………。
……そんな私の曖昧な推理は、迫り来る睡魔の中に掻き消えていく。
きっと起きてシャワーを浴びれば消えているような泡沫の思考。それでも想起せずには居られなくて
未だ火照りの治まらない逆上せた身体を丸め、蹲るようにしてベッドの中へと潜り込む。
…………シスターさん。あの人への謎は深まるばかりだ。そして、その謎と同じくらい……私は、あの人に「興味」を抱いている。
いつかこの大阪の「異変」を突き止め、あの人の謎も明かして見せる。
微睡みの中で肥大化した“夢”を心の中で反芻している内に……いつの間にか、眠りの中の“夢”へと落ちていった。
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