剣道少女のバスタイム 2/3
2022/05/09 (月) 03:03:32
「「…………あっ」」
身体と思考が一瞬硬直する。
目の前に現れたのはシスターさん。脱衣所で洗濯機から洗い物を取り出している最中のシスターさんだ。
思いがけぬ鉢合わせが頭の中を吹き飛ばし、脳内が真っ白に塗りつぶされる。
その直後、脳内のファンは高速回転。先程流したはずの汗が再びこみ上げてくるのも感じ────
「ごごご、ごめんなさいっ!!」
何故謝ってしまったのか。自分でも理解出来ぬ内に、素早くバスルームに戻り扉を閉める。
時間にして1秒にも満たない逡巡の間だが……それでも私の精神を乱すには十二分な衝撃を及ぼし
逃げ込むように再び湯船に飛び込むと、顔を沈めて無音の叫びを吐き出した。
『バスタオル、ここに置いておきますねぇ』
扉越しのシスターさんの言葉すら、今の私の耳には届かない。
俯いた先の水面には、上がる直前の倍は紅潮した私の顔が映し出されている。
この頬の上気も水面を揺らしてしまいそうな心臓の鼓動も、全ては長風呂で上せたせい……だと思いたい。
ぶくぶくと音を立てて弾ける呼吸。伴って生じる、今の心境を表すかのような複雑な波紋。
……見られてしまったただろうか。それとも、素早くドアを閉めたから見る間もなかっただろうか。
後者であることを強く願う。そう思いこんでいなければ、この緊張が解けることはない。
暫くした後、私は脱衣所に人が居ないことを確認してから素早く体を拭き、パジャマに着替えて自室へと戻った。
…………お風呂上がりなのに悶々とした気持ちのままなのは、初めてだ。
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