剣道少女の朝ごはん 2/2
2022/05/06 (金) 09:13:35
「────っ!?!!??!」
痛い。
辛いのではなく、痛い。
口の中が破裂したように痛い。
溢れ出す汗、涙、涎。暑さすら感じられず、むしろ汗が外気に触れ寒気すら覚える。
「ぅ、ぅう……っ、か、から……ごほっ、いたい……っ!」
その痛みはまるで、傷口に塩を塗ったような…………あっ。
そうだ。それは比喩表現ではない。私は先日、爆発に巻き込まれて吹き飛ばされたばかり。
全身の痣だけでなく体の内側にも、具体的には口内にも傷を負っていたのだ。
つまり今私は、その生傷に塩ならぬ唐辛子を塗りたくっているようなもの。ついでにとろみのおまけ付き。
痺れるようで抉りこむような痛みに耐えかねて、思わず椅子から転げ落ちる。
「み、みず……みずを……!」
「あはー。水は辛味を促進させますよ。辛さを抑えるなら、これをどうぞ」
シスターさんから差し出されたものは……牛乳。
コップに注がれたそれを一息に飲み干して、汗だくになった体を拭いながら呼吸を整える。
……数分が経っても痺れが引かない。口内の傷があったとはいえ、これほどまでの激辛であったとは。
自らの未熟さを顧みると共に、それを平然と食していたシスターさんに対しても畏敬の念を抱いてしまう。
ああ……しばらくの間、熱いものは飲めないな。
美味しそうに湯気を立たせる味噌汁を羨ましげに眺めながら、私は大人しくいつも通りの朝食を食べ進めるのであった。
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