限られた設備と環境で何が出来るだろうか。適当な地縛霊に後片付けを任せつつ、手頃な椅子に腰掛けて考え込む。
『工場』で召喚された自分に、相応しい職場が与えられたことに感謝しつつも燻る炎は消えずに心の底で燃え続ける。
来客を全員追い出した迷宮は殺風景でしかなく、与えたタスクを忙しなく済ます幽霊も山を賑わす枯れ木にもならない。
利用可能な陣地も設備も魔力も最低限に限られ、追加人員の増加も見込みが薄い現状を鑑みれば仕方の無い話ではある。
表面上は頑丈な施設でも、心は腐り果てた廃墟。陳腐で有り触れた謎とギミックに辟易しつつ無味乾燥な日々を消化する。
『熱海城』に分譲されてから日常が一変するまで、そう長い時間は掛からなかった。恋い焦がれた全てがその場所にあった。
享楽に耽る現代の不夜城が放つ眩い光すら届かない、絶望と恐怖に濡れる地下殺戮遊戯場。今日も命が無意味に潰えていく。
理解不能な難解なギミックも、挑戦者を容易く屠るトラップも、全てがキャスターの意のままに組み替えられ変貌するのだ。
「果たして憐れな参加者が手にするのは"自由"か?"死"か!?『殺戮遊戯』の開幕です!!」
拡声器を片手に『死亡遊戯』の開幕を告げるキャスターの顔は、新しいゲームを目の前にした少年の如く無邪気であった。
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