投稿予定の喪失帯SS
2022/04/24 (日) 04:49:39
『まさか、音楽が人と魔の境すら越えて繋げるとは思わなかったなぁ』
人と人ならざる者が犇めき合うマンハッタンに存在する喪失帯。青白く輝く魔酒を呷りつつ、潜りの酒場でインターネットは夢想する。
人も魔もジャズの音色を逃さず耳を傾け、違法の魔酒に酔い痴れる。音楽が世界を駆け巡った新時代の当事者でさえ、想像し得なかった幻想の光景。
音で楽しみ、酒で打ち解ける。どうやら異世界のアメリカ合衆国でも酒場の常識は変わらないようだ。何者であれ、何様であれども。
『この世界も音で充ちている…おっと噂の歌姫の登場か』
『そうか彼女か、異世界でも元気にやってるなら嬉しい限りだ』
人魔の坩堝。混沌の雑踏。それらを貫くように聳える摩天楼から零れる音色。
それは私の見知った歌姫であり、煌めく可能性の光に彩られた未来の歌手。
『言葉が有り余れど尚、彼女の夢は続いていく…か』
誰も気にしない呟きが、酒場の場末に掻き消えた。
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