「」ゲミヤ
2019/12/24 (火) 21:59:57
__________しゃんしゃんしゃん、しゃんしゃんしゃん。
モザイク市「天王寺」の雪降る聖夜の寒空を、ベルの音を響かせながら一台のソリが翔けていく。
けれどソリを引くトナカイは影のように真っ黒で、ソリに乗ったサンタは四人もいる。
もこもこのサンタ服に包まれた銅色の髪の少年は、夜空を駆けるソリに目を輝かせ、両手を挙げて風を切る気持ちよさを堪能している。
彼を抱えた、控えめにサンタ帽だけ被った学生服の銀髪の少女は、不服を申しながらももその顔はまんざらでもなさそうで。
先頭に立つ、赤いスーツに付け髭までつけてサンタになりきった青年は、次の家はどこですか、と背負った袋からプレゼントの箱を取り出し。
その隣に腰掛ける、巫女服を模したふわふわのサンタ服を着た黒髪の少女は、次はあちらですね、と手のひらサイズの鏡を通して天王寺の街を見渡している。
クリスマスキャロルという小説では、ごうつくばりのスクルージの元に三人の精霊が現れ、過去と現在と未来を見せて、彼を改心させたという。
だから、少しぐらい「ずる」をしても、今宵は神様も許してくれるだろうと。
巫女の少女はその瞳に移る暖かな未来へ向けて、夜空にソリを走らせていく。
今年のクリスマスは、天王寺では二台のソリが夜空を駆け。
そして天王寺に住む少年少女たちは、前の年より一つ多くプレゼントを貰ったのだと、いつもより賑やかに聖夜を過ごしたのだとか……
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