イーサンとギドィルティ・コムの年末あたりのお話②
2022/01/25 (火) 20:10:39
年末に店をいくつか回って最安値で餅を買い集めたイーサンは、普段よりわずかに穏やかな気分で大晦日の夜を迎えていた。
食事を終えたギドィルティ・コムはテレビのチャンネルをぱちぱちと切り替えている。
2チームに分かれて歌で競い合う番組、中年の男たちが尻を殴られている番組、各地の様子をリポートしている番組、警察活動に密着した番組。
イーサンはアルコールによって軽く酩酊した頭で、それを見るともなくぼんやり見る。
ギドィルティ・コムがリモコンのボタンを押す手が止まる。
『老舗の蕎麦屋さんの……ではみなさんが年越し蕎麦を……細く長くという願いを込めて……』
「ナあ」
「あん?」
「この天ぷらそばッテやつが食いタいなマスター?」
語尾の上がり具合に込められた恫喝に近い響きに、酔いが一瞬で覚める。
「いやいやちょっと待て、そういうことは事前に言ってもらわねえとこっちにも準備ってもんが」
そんな上等なものをすぐに届けてくれそうな近場の店を脳内で検索するが1件もヒットしない。
「しょうがナイ。仕方ガないから手近ですまスか」
「○○○○(クソッタレ)!!」
テレビから気の抜けた鐘の音が聞こえてくる。
イーサンが年明けの最初に見たものは、妙に尖った歯が生えそろった大きすぎる口を開けて飛びかかってくるギドィルティ・コムの姿だった。
「いってぇ!!!!」
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