地に描かれた陣の上には、触媒たる髑髏の面。その前に立つのは、およそ魔術世界とは無縁そうな一介の学者。
「…汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ……これで良いハズ、なんデスけど」
アンジェラが首を傾げた瞬間、召喚陣に光が宿った。
「ひゃ──」
強烈な光が収まった後、そこに居たのは黒衣の女性。
「サーヴァント、アサシン。山の翁、ハサン・サッバーハ。召喚に応じて…」
「……オォー」
「近い。…あなたが私を召喚したの?」
「あっハイそうデス!本職は心理学者なんデスけど色々あってマスターをやる羽目になったデス!周りに内緒で!」
無言でも、仮面の上からでも分かる程に、アサシンはえぇ…という反応を返す。
「あっ今ちょっと残念がりましたデスね!?心理学でわかりマスよ!」
「流石に心理学関係ないでしょうそれ。……まぁ、いいわ。精々私をうまく使ってみせなさいよ」
「そうデスね、アサシンならたぶん大当たりデス!最初は無闇に戦闘を仕掛けずこっそり調査してもらいたかったデスし、ワタシはワタシで最初はマスターとしてではなく、表舞台から警察と協力して動くデスし。機動力があって、運よくマスターを捕捉できればkill!も現実的なクラスとなれば相当動きやすー……あ、ごめんデス話しすぎたデス?」
「……へぇ」
軽い調子のまま、つらつらと戦術を述べていくアンジェラを見てアサシンの声色が変わる。
「いいえ、むしろ、少なくとも印象よりはちゃんとしているみたいで安心したわ」
「むきー!印象よりはってなんデスかー!」
大人げなくきゃいきゃいと騒ぐ自らのマスターの姿に、仮面の裏でアサシンは微かな笑みを漏らして。
「そういうところよ。……まぁ、一先ずは従ってあげるわ。よろしくね、マスター」
「なんか体よくあしらわれた気もするデスが……ハイ、よろしくデス」