泥新宿×綺羅星 貸本屋は一人嗤う
2021/10/24 (日) 21:32:12
夜の泥新宿は基本的には静かだ。
音を立てられるのは人と戦力が集まっている場所に限られる。
そうでない場所で騒がしい音を立てれば魔獣やチンピラに群がられて文字通り裸一貫にされるのがオチだ。いや裸で済めば運が良いだろう。
だから泥新宿は静かで本を読むのにちょうど良い。
貸本屋…という事になっている少女?ビーチェは心の底からそう思っている。
かつての姿を辛うじて留めている新宿駅のホームで売り物の本を読む。
「今日はお客さんが来ませんね」
来るわけがない。この街で怪しげな貸本屋に出向いて本を借りようなどと言うか好事家はほんの一握りだ。
河岸を変えようかと読んでいた本、全寮制の女学校、その寄宿舎に住む少女達の物語、を閉じ、立ち上がった。
その瞬間、あちこちから強力な魔力の反応を感じ思わず周囲を見渡す。
「余所から何人か連れてこられたようですね、『彼』の仕業ではないようですが……クヒッ、クヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
何がおかしいのかビーチェは狂ったように一人笑い声を上げる。
「さて、ロクデナシの色狂いが動く前にたまには人助けでもしますか」
ビーチェ、いやロストベアトリーチェはゆっくりと動き出した。
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