kagemiya@なりきり

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2102白神竜胆ルート4章「屈辱(仮)」 2021/09/25 (土) 04:57:56

魔力負荷と超過駆動に限界だと叫ぶように体が軋む、分かっている。限界が近い。
敵は如何なる理由かマスターなしで現界を続ける亡霊の王ワイルドハントと化したセイバーとその配下である19騎、そして…
思考の合間を縫って、敵の一騎が側面に回りこんでいた。
まだ辛うじて反応できる。大振りの剣撃をシールドバッシュで弾き返す。
決定的な隙にガラティーンで胸を突き刺し、魔力を注ぐ。敵は黒炎によって灰も残らず燃え尽きる。その筈だった。
だが、敵を焼き尽くす程の火力が出ない。まるでルーカンがシチューを煮ている時の弱火だ。
剣を無理矢理上に持ち上げ、頭を真っ二つにして引き抜く。これで3…4騎目だったか。
「バーサーカー!」
俺を援護しようと、『マレフィキウム』が魔術を行使しようとするが、疲労からか足が縺れている。
無理はない。既に1時間は第二形態を維持し続けているのだ。
瞬間、何かが『マレフィキウム』を狙って飛来した。
盾で受けるのが間に合わない。射線に割り込み鎧で受ける。
肩を貫通し、血が鎧を赤く染める。
奴は俺に確実に当てる為に、わざとマスターを狙った。
懐かしくも忌まわしきこの矢は忘れられる筈がない
奴はこの弓矢の技巧を持って数いる騎士の中で第二の騎士と称えられた。
セイバーの軍勢、最後の20騎目、アーチャー…トリストラムだ。
意思なきその瞳はまるで人形のようで、イヤでも奴が敗北したのだと実感する。
気に入らない。騎士を捨てただと?ワイルドハントだと?
ただ、負けたのなら良い。だが、その醜態はなんだ?捨てた筈の騎士鎧を身に付け、主でもない奴に従い生者を襲う。
これが、あのトリスタンの姿か!
叫び、吠えたてそうになる口を閉じ、歯を食い縛る。血の昇った頭を振り、冷静さを保とうと深呼吸。
「マスター、ここまでだ」
バックステップで後背へと退き、『マレフィキウム』の姿を敵から隠すように盾を構える。
「…ふざけんな! アタシはまだ、まだやれる!」
無理だ、肩で息をして、呼吸が整わない。
「君の目的が、果たせ、なくなるぞ」
「クソ!クソ!クソ!退く!退くぞバーサーカー!」
マレフィキウムの拳から血が滲む。
叱責なら後で幾らでも受けよう、罵倒もされよう。例え、君がそれを望んでいないとしても、それでも…私は、君に生きて欲しいと願う。

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