「ビンゴ、だな」
とあるビルの屋上、双眼鏡で教会から出てくる二組を見ながらラモラックは呟いた。
「もう一組釣れるのは予想外だけどな、僥倖って奴か」
マスター、マレフィキウムは上機嫌そうにその様子を強化された視力で見ている。
随分上機嫌だな、等とは言わない。ここ数日でラモラックはマレフィキウムとの付き合い方を分かってきていた。
恐らく次は……
「早速潰しに行くぞ」
「どちらからだ?」
予想通りだ。とは言え、彼女は無謀ではない分断してどちらかから潰す筈だ。
無謀ではないか?などと言ったら蹴られるかゴミを見るような目で見られただろう。
顔面蹴られたり魔術を使ってこない分可愛いものだが。
「おい、なんだその生温かい視線は。取り敢えず男と騎士っぽい方からだ」
「理由は?」
結局脛を蹴られた。脛当てに足が当たった金属音が小さく響く。
「勘」
ふむ、と頷く。魔術において勘という物は案外バカに出来ない。ならここはマスターの勘に任せよう。
「では、マスターは、もう一組を?」
「ああ、あの女の面が気に入らない」
その答えに好きにすればいいさ、とでも言わんばかりに肩を竦める。
今度は金槌で兜を叩かれた。流石に頭が揺れ、少し大きな金属音が響く。
音が出ないように金槌にタオルを巻いていたようだ。
この程度可愛いものだ、という言葉は訂正しよう『マレフィキウム』の名に相応しい。
「1分半だ、プラマイアルファはアンタの勘に任せる。コテコテ同盟が連携を組むならそれ位が妥当なタイムだろ? んだから、1分半でキッチリ殺す。魔力回すぞ …ブッ潰せ!!バーサーカー!!」
マスターの表情、と言っても見えないが。その気配が変わった、遊びは終わりだ。
「承知した。……離れてくれマスター」
魔力を全身に回すと黒炎が全身を包む。
手摺に足を掛け、そこを踏み抜くように跳躍。
今日は月が随分と明るい。
月光を遮るように宙返りして、逆立ちのような姿勢になるとターゲットの二組を視界に入れる。
見覚えがあるような気もするが、直接見れば分かるだろう。
黒炎を噴出させ、加速。二組の間に向けて槍を投げる。
さぁ、決闘と行こうじゃないか。ルールは『マレフィキウム』流だがな。