kagemiya@なりきり

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2102サイドエピソード「お洒落のアドバイスなら服だけじゃなくて相手も選べ」2 2021/09/25 (土) 04:32:55

「お兄さん、ちょっと良いですか?」
急に掛けられた声にラモラックの思考が中断される。
「……なにか?」
声の主は青年だった。
爪先から頭の先まで、値踏みするように視線を走らせる。
ヘッドフォンを首に掛け、パーカーとスキニージーンズによる活発的な印象を与える服装。
見掛けだけなら聖杯に与えられた知識と《TSUCHIKA》で購入した本を読んだ情報を総括して考えれば限り今時の若者、と言った所か。
高度に土夏を再現された《TSUCHIKA》では相手がNPCか人なのか、サーヴァントなのか判別をつけるのは難しい。
魔力は然程感じない。……両手は、手袋を付けていて見えない。
「いえ、数日前からここに座っているのを見掛けまして」
「ああ、近くの、ライブハウスで、夜に、ライブを、やらせて貰ってるんだ」
少なくとも敵意を向けている訳ではないようだ。
用意していたカバーストーリーを口にする。
NPC相手に何度も同じことを話していた。
「ライブですか?」
意外そうな顔を見せる青年。
「ああ、ベースを、やっていてね」
近くに置かれたケースを指差す。
無論、虚偽である。内部にはガラティーンが入っている。
「元々は、イギリスに住んでたんだが、日本の友人に、誘われて、此方に来たんだ」
ゆっくりと、相手に警戒されないように立ち上がった。
「土夏は良いところだ、ロンドンに比べて飯が安くて、旨いのが、最高だ」
歩きながら言葉を続ける。
サーヴァントではない。サーヴァント独特の戦慣れや修羅場慣れした雰囲気が彼にはないからだ。
NPCかマスターかこの場で確かめるか?
マスターであるか判別するのは難しくはない。
この場で襲い掛かり首の一つでも締め上げれば良い。
昼間は襲撃や戦闘が制限されている《TSUCHIKA》であれば、俺はその場で動きが止まるか停止する。
マスターであることが分かれば、昼間に活動していれば格好の獲物だ。
昼間の内に後を付けねぐらやアジトを探しだし22時になった時点で強襲をかけられるだろう。
(……まぁ、マスター抜きでやるにはリスクがありすぎるな)
NPCだった場合は犯罪者として通報され、昼間に動きづらくなり、他のマスターやサーヴァントに面が割れる可能性がある。
独断専行でやるべきではない。ラモラックはそう判断した。
「まだ、此方に来て、日が浅いもので、言葉が、たどたどしくて、聞きづらいだろう?」
青年に笑みを見せる。
「いえ、お上手ですよ!…僕はてっきり、ヤの字の人かと」
あはは、と青年は頬を掻きながらはにかむ。
「ふむ(ヤ? マフィアか) 昔から、服装には、無頓着でね、ライブの衣装は、友人が用意したもので、良いんだが」
「そうだ、良ければ、私に似合う、服を見繕って、くれないか」
「ええ、僕で良ければ!」

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「と、言うわけで、その青年に、服装を選んで貰った」
仏頂面のまま経緯を語るラモラック。
はぁーっと大きなため息を吐くと、マレフィキウムは大きく深呼吸をする。
「………今すぐ着替えて来やがれ!」
怒鳴った。マレフィキウムは今までにない怒りを込めて自身のサーヴァントを怒鳴り付けたのだった。

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