kagemiya@なりきり

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警邏日誌 20XX/○○/○○ 担当:四課 雁鉄アズキ 2021/08/18 (水) 04:25:59

心斎橋を警戒中、怪しい人物に遭遇。
赤茶色の髪、琥珀の瞳。スポーツタイプの水着。噂に聞く「繋ぎ屋」の特徴と一致する。
彼女が直接問題を引き起こすわけではない。が、彼女の取り次ぎによって度々事件が引き起こされている。
先日の騒動……以前、私達が取り逃がした男によるサーヴァントの強奪未遂事件……も、恐らくは彼女の斡旋によるものであったのだろう。
逃がし屋に繋ぎ屋。厄介な連中がこの大阪圏には多すぎる。

軽く声をかけてカマをかけてみれば、案の定噂の「繋ぎ屋」だった。
問い質すと悪びれもなく己を正当化する。あまつさえ、こちらの行いを下賤と宣ってみせた。
捜査に協力する素振りも見せないので、強制指導という形で連行する事とした。

激しい抵抗、詳細不明の魔術による妨害行為により補導は難航する。
切りつけた刀……正確にはその血痕だろうか、いずれにせよ刀から謎のワイヤーが伸び、彼女の手に絡め取られる。
面倒だ。もう一本の柄からもワイヤーが伸びている。このままでは簡単に絡め取られるだろう……と、言うのを見越して。
私の刀には細工が施してある。それは鞘に仕込んだ炸裂機能。引き金を引けば信管が炸裂し、飛び出した杭の勢いを以て刀身を射出するという仕組みだ。
高周波ブレードは構造上、どうしても刀身・柄側の重量が増す。パワードスーツならともかく、一般人ではまず取り回すことは出来ない。
そこで刀身自体に勢いを持たせ、初動の衝撃を以て居合の一太刀とする。というのがこのマゴロク製三九式振動剣のコンセプト。
絡め取られるのなら、先んじて刀を食らわせてあげよう。余裕げに笑う繋ぎ屋の顎元に狙いを定め、引き金を引く。

うん、それにしてもあの時の繋ぎ屋の顔は、思い返すたびに笑いがこみ上げる。
ぶへっ、と短い声を漏らし、900gの鉄の塊を顎元に打ち付けられると、軽い目眩を起こしたようにその場に倒れ込んだ。
おじいちゃん流の戦い方じゃないけど、バーリトゥードはミナミの常識。経験はそれなりにあったみたいだけど、今回は私は一手上を行ったね。

倒れ込んだ繋ぎ屋の手首にワッパ……手錠をかける、その瞬間。
“来い、セイバー”。その呼びかけを耳にすると同時に、私の思考は一瞬固まって、そして

呼びかけと同時に、背後に氷のように冷たい気配が現れたこと。

その冷たい気配は冷酷、かつ的確に、私の首筋に向けて抜身の刀を振るっていたこと。

あとほんのコンマ数秒遅ければ、私の首はボールのように跳ね飛ばされていたであろうこと。

…………耳を劈く金属の衝突音が鳴り響き、横薙ぎに払われるその刀を、軽々と受け止めてみせた……もうひとりの、セイバーがいたことを

文字通り瞬きのうちに感じ取ると、振り返った時には……冷たい目で“セイバー”を見据える“セイバー”、そして“セイバー”を見下ろす平然とした“セイバー”が立っていて。
おじいちゃんが助けてくれなければ、今頃は。そんな実感が遅れて押し寄せ、全身の血の気が一斉に引いていくのを感じ取る。

驚きの表情を浮かべていたのは私だけでなく、繋ぎ屋も同様に。
私を完全に仕留めるつもりだったのだろう。隠し玉であろうサーヴァントの強襲を防がれ、呆然と二人を見据えている。
対する彼女のサーヴァント……セイバー。マスターの繋ぎ屋よりも二回りほど幼いであろう、小学生とも見紛う体躯のセイバーは
驚くことも戸惑うこともなく、おじいちゃん――――の、手にした刀を見定めているようで

“ほう、その三本杉。この儂が知らん孫六の真作を持っとるとは……成程。当代は随分と別嬪さんじゃの”

さらりと真名を看破してみせたおじいちゃんのその言葉を聞いて、雰囲気を一変させた。
具体的には、抜身の刀のような雰囲気から見た目相応の子供らしい幼気な表情に。目を輝かせて刀を仕舞い、先程自らの刀を阻んだ一振りに目を移し
“どうして私の真名がわかったの!?”“この重ね厚い刀身、切っ先の伸び、刃紋互の目丁子刃……”“武州住藤原順重作!つまり、おじいちゃん――――あの千葉周作!?”
ああ、こっちもこっちで一瞬で真名を見抜いてる。昔、武装が何よりも真名を物語ると聞いたことがあるけど……こういうことか。
真名を見抜かれ、話の通じるサーヴァントとあっておじいちゃんの剣気も解け、つい一分前までの雰囲気はどこへやら、二人は朗らかに雑談を初めてしまった。

その様子を眺めて、あっけらかんとした表情で固まる繋ぎ屋。まあ、私も似たような表情をしてたけど。
最早抵抗する気力も無くなったのか、大人しく手錠にかけてそのまま支部に移送。
現行犯でもなければ関連する証拠もないとして、厳重注意で開放されたけど……あの様子じゃきっと、大して懲りてないだろう。
とはいえ収穫もあった。あの繋ぎ屋の本名を知れたこと、そして先日の騒動に、あの逃がし屋が関わっていたこと。その情報の裏付けが取れた。

……以上、本日の報告。

ついでに追記。繋ぎ屋との交戦場所にて、恐らく彼女の物と思われるアクセサリーを拾った。
ブランドは……天王寺のラグジュアリーショップ。高価なものだろうし、癪だけど遺失物として支部に預けておくことにする。

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