「まず、君は何で女性の姿で現界したんだ?」
俺は精一杯平静を保ちながら、俺が召喚したライダーに対して質問する。
するとライダーは、俺の聖杯戦争の目的も知らず、気楽に答えた。
「うーん、ごめんなさい。ちょっと分からないんです」
「でも、こうなったからには、この状況を楽しみたいです!なるようになれ、ですね!」
「ふざけているのか…!」
俺はつい、隠さない本音を口にしてしまった。いつもの"完璧"ではない、本当の俺を
流石に気の抜けたライダーも、俺が豹変したかのように見えたのか、恐怖の表情を見せていた。
「ご、ごめんなさい……。で、でも私、精一杯に頑張りますから……」
「ああ……いや、すまない。こっちも、怖がらせるつもりはなかったんだ、俺は……」
と、謝りそうになって俺は正気に返る。何で俺は使い魔相手に、人間を相手取るように取り繕っているんだ?
相手は亡霊だ。もう死んでいる存在を再現した戦いの道具だろう。そんな奴相手に……と考えたその時、ライダーが呟いた。
「こんな事を言うのもなんですけど…少し、嬉しいです。マスターが、そう言ってくれて」
「……何だと?」
何を言っているんだこいつは。状況を分かっているのか?俺はお前を脅迫するように問い詰めたんだぞ?
普通は信頼関係が揺らぐはずだ。所詮は聖杯を求めるという薄っぺらい利害関係しかない俺たちでしかない
その上下関係で上に立つ俺が、完璧じゃない部分を見せたんだ。それを"嬉しい"だと?どういう腹づもりだ?
「だってマスター…いっつもどこか本音を隠しているようで、なんか寂しかったんです。
でも、今やっと初めて、何も隠さず喋ってくれた気がして、嬉しかったんです」
「………」
動物の勘、という奴か。誰かに喋られでもしたら厄介だ……。自害でもさせれば新しい英霊を呼び出せるか?
…いや、再召喚できる保証はないか。それに、こいつは底抜けの馬鹿だ。誰かに算段で喋るような事はしないだろう。
「なるようになれ、か……。ウマが合わんな、君とは」
「あ、今の馬とかけたんですか!?かけたんですね!?」
「五月蠅い黙って寝ろ。明日も早いんだから」
────そう言って、七砂和也は眠りにつく。"なるようになれ"。その言葉こそが自らを救う鍵になる事に、気付かないまま