その姿は、青い雷光を辿れば確認できた。
太刀筋に沿って流れる稲妻が英霊兵の腕を、首を刎ねて荒れ狂う。そこでセイバーは周囲の敵を一掃し終えたようだ。
彼女は僕たちの姿に気づくと凛とした表情を変え、こちらへと歩み寄って来た。
「マスター!無事だったのね!」
「遅れてごめん、セイバー。状況は?」
「……見ての通り。脚が動かないのが不甲斐ないばかりだわ」
歯噛みする表情をセイバーは隠さない。
彼女とアーチャーの協働、そしてバーサーカーの介入を以ってしても、ここ一帯の市街全体まで戦火が広がってしまっていた。
それだけ、ランサーの攻勢は圧倒的だ。単体のサーヴァントとしては異質と言ってもいいが、それに是非を問う意味はない。
『カノン君と合流できたようですね。こっちは今、アーチャーと共に敵のマスターを追っています』
『……おや、随分珍しいものを拾って帰ってきましたね?』
「…………」
セイバーの肩から羽のついた小動物が顔を出した。確か、血を媒介にしたシズカさんの使い魔だったか。
どうやらランサー自体の撃破は困難として、魔力源たるマスターを確保する戦略に切り替えたようだ。
使い魔は視界も共有しているらしく、自分が抱えているヴィルマさんをじろりと一瞥し、彼女は無言を返していた。
「ランサーの本隊は?」
「今も侵攻中よ。思ったより脚が速くて防御に回る数も多い、まともにやり合うには手強い相手ね」
「バーサーカーとは連携できませんか?」
『全っ然ダメです。1番英霊兵の数を減らしてはいますが、完全にワンマンで動いてますよアレは』
ランサーの軍は数が多く、火力があり、それでいて軍勢としては烈火の如く素早い侵攻を見せる。
セイバーによる迎撃は回避されるし、アーチャーの狙撃も未だ有効打を与えられない。
そして唯一機動力と面の火力を持つバーサーカーは自身の判断で勝手に動き回る、それぞれの戦力が効率的に働いていない。
『そちらのフロイラインがもっと上手に指示してくれれば話が早いのですけどね?』
「……バーサーカーの運用について、私自身に口を挟む意図はありません」
「彼はアーネンエルベのサーヴァントで、私はその意向を伝えるまでのこと」
『この期に及んでそんな悠長な……そのアーネンエルベの意向とやらはいつ通達されるので?』
ヴィルマさん自身、バーサーカーの行動には一切干渉していない。
というより、これまでの邂逅では彼はアーネンエルベの指示にも従っているようには見えなかった。
シズカさんも不機嫌になってはいるが、最初からヴィルマさんが力になるとは期待していなかったようだ。
―――だが、どの道このままでは状況は悪化するばかりだ。だったら、