ポッキーの日:ではなく哀悼の日
2020/11/12 (木) 00:00:39
今年も、街道の方から聖歌が聞こえてくる。
11月11日、リメンブランス・デー。一度目の世界大戦が終わった日、英国では戦没者の追悼が行われる。
僕が生まれたのはその年から丁度10年、更に11年が過ぎた時、僕達を巻き込んだあの戦争が始まった。
二度の戦いは世間に大きな変化を強いた。大きな科学発展があったというが、その下であまりに多くの血を流した。
それでも小競り合いは続いて、科学の力で大国同士が睨み合う。平和とはつまり、戦争の小康状態に過ぎない。
そして、僕の戦いも続いていく。銃砲飛び交う中を抜けて、確かに英雄がいた"あの戦い"を超えて、
そして今は、この家と彼女のために、魔術という影の世界を生き抜く準備を進めているところだ。
まずは纏まった資金を。以前通った道を遡って東方へ、珍しい品や技術を回収する宝探しを計画している。
荷物を整理して、銃を整備して、サーベルを磨いて、それから。―――チョコレートが食べたい。
兵士として従軍した頃、10代だった僕らにとって厳しい訓練を癒す嗜好品は、煙草でなくチョコレートだった。
絶品とは些か言い難いが、それを喜び、実戦の前に祈りを込めて頬張っていた瞬間が確かにあった。
だからふと、この先も続く長い戦いのために、あの時よりもおいしいチョコレートに祈ろうと思い立った
とりあえず家の人に手頃な菓子を用意してもらうとして……問題は、仕事詰めの彼女の方だ。
時間を作れるかはわからないけれど、そこは何とかして。一緒にお菓子を摘む時間を作って貰うとしようか。
この儚い平和を、幸せだと感じるために。
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