ポッキーの日:少年王
2020/11/11 (水) 23:59:33
『"良い"11月の忘れられない日―――』
1111。伝統的に菓子業界の一角に動きがある。旧時代より続くポッキーのプロモーションだ。
仕事終わりにおまけで貰っていたポッキーを齧り、ニュースを見ていた端末に共に並ぶ自分とパーシヴァルの姿が映った。
日常を背景に場面が移り変わり、それぞれのシチュエーションでポッキーを口にして、そして―――
「――――――!!」
咄嗟に目を逸らした。CMが終わったのを熱い耳で聞きながら、恐る恐る画面に向き直る。
古くから続くポッキーのレガシーと説明は受けたものの、撮影時はもう心臓が飛び出しそうになっていた。
「いやぁ、まさか撮影の時の見せかけからこう仕上がるととは……」
それは隣のパーシヴァルも同感のようで、苦笑しながらも透き通った白い肌には明確に朱が差している。
CMは何度も流れる。今日は羞恥の洗礼を互いに受けながら、一緒にポッキーを食べて過ごしていた。のだが、
「その、パーシヴァル」
振り向かせた彼女の顔が、ポッキーを咥えた自分を見て静止した。
仕掛けた、というにはあまりに稚拙、勢い、といえばあまりに不誠実かもしれない。
それでも、跳ねる鼓動を押しながら、画面の中の二人の前で自らを差し出す。
ただ、この日を演技で終わらせたくなくて。
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