kagemiya@なりきり

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伯林裏聖杯戦記断章「共闘」 2020/10/02 (金) 10:50:02

「ねぇねぇスコルツェ兄さん、なんで僕らに協力してくれるのさ」
「それは僕も気になったよ、是非聞かせて貰いたいね」
英霊兵製造工場襲撃に向け、工場を見下ろせる建物の一角に居座り様子を伺っていたクリスタ、基フルスタはふと疑問を口にした。
代用コーヒーを手に現れたユスポフもフルスタに同意し、妖しく微笑む。
「あ? なんでって、そりゃ……」
工場を覗いていた双眼鏡から目を離したスコルツェニーはユスポスからカップを受け取ると珍しく言いにくそうに表情を歪めた。
「僕と違って君達は国に忠誠を誓った軍人とスパイよね。 スコルツェニーは髑髏と鉤十字に、フルスタは鎌と鎚に。そんな君が何故国に敵対してまで私達に協力するわけ?」
ユスポスの眼差しは正確に的を居抜く矢のように感じられた。
フルスタも無言でスコルツェニーを見つめる。
当たり前だが、疑われている。とスコルツェニーは感じた。
「……俺はドイツの為に黒衣の軍服に袖を通した。そんな俺が今ドイツに弓を引こうとしてる。確かに矛盾だ、だが俺は総統からこの聖杯戦争を見届けろと言われた」
「それは理由にはならないんじゃない?」
ユスポフの言葉に頷くスコルツェニー。

「その通りだ。見届けるだけなら何もしないのが正解だろう。ヴェーレンハイトやハウスホーファーのお題目がそのままならドイツは救われる。それでめでたしめでたしだ」
「…………ふざけろよ。ドイツ人にもロシア人にも何万人にも血を流させて聖杯なんて訳のわからねえもんに頼って解決だ?しかも、それを主導してるのがあの胡散臭い二人と来てる。ナチスのバカ共はこの国が負けたことを受け入れるべきだ。……例えどんな悲惨な未来でも。ヘルトクリーガーも聖杯もこの国には要らねえ。だからお前さん達に協力してる。……この答えで納得したか?」
「ふーん、中佐さんも色々考えてるんだね」
「そもそも私は地位と名誉が目的だから興味ないもの」
「ああ、そうかよ」
「中佐さん、一つ確認したいけど聖杯はうちが貰っていいんだね?」
「好きにしろよ、精々アメ公達と奪い合え」
フルスタの言葉を聞き流すと乾いた唇を潤そうと冷めかけた代用コーヒーに口をつけた。
「交渉成立ね、改めて宜しく」
差し出されたユスポスの手を一瞥したスコルツェニーは鼻を鳴らした。
「誰がラスプーチンを殺した男と握手なんてするか」
ただお互いの目的を果たす為。ここに奇妙な同盟関係は正式に結ばれた。

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