kagemiya@なりきり

MELTY BLOOD企画SSスレ / 19

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支とヴィルヘルミナ・観戦(1) 2024/02/20 (火) 21:57:31

風が頬を撫でる。
場所は路地裏。時は深夜。状況は、ヴィルヘルミナと死徒の戦闘の真っ最中。
人の眼では捉えきれないほどの速度で彼女らは狭い空間を飛ぶように動き回り、攻撃の応酬を繰り返している。
建物の壁の一部が抉れる。刃物で切り取ったかのような跡だった。
しかしヴィルヘルミナは丸腰、相手の死徒も何か獲物を持っている様子は無い。
爪かとも思ったが、それにしては傷が付く場所があまりに離れ過ぎている。
おそらく鎌鼬かなにか、遠隔の武器か技術で斬撃を飛ばしているのだろう。
その証拠に、戦いを眺めている僕の真横を頻繁に風が通り過ぎる。直後に床が傷つく音が後ろから聞こえるので、間違いないだろう。
あいにく、それが僕に直撃することは無いのだけど。
趨勢はヴィルヘルミナの優位に見える。相手がヒットアンドアウェイで距離をとりながら一方的な攻撃を行おうとするせいで手間取りはしているが、敵の刃は一度たりとも致命の位置には当たらず、彼女の肌は裂かれるたびに再生を行うので、相手はジリ貧だろう。
そうこうしているうちに、決着は付く。空へ飛んだ死徒が、地面に着地する瞬間。ヴィルヘルミナは凄まじい速度で懐に潜り込み、死徒の首を噛んだ。
ここまでくればもう番狂わせは起こらない。吸血行為は相手の存在そのものを喰らい尽くす簒奪手段に他ならず、名も知れないこの程度の死徒ならば、争う術も無いだろう。みるみるうちに死徒の身体が干からびていき、最終的に塵も残さずその場から消滅した。

「終わったわ」
「おつかれ。どう?血を吸って体調は」
「悪くないけれど、私の血は一滴も無かったから、別段変わらないわ。持っててこの強さだったら、それこそ失礼しちゃうのだけれど」
「そうか。今日は今までより骨のあったように見えたから、もしかしたらと思ったけど」

残念だ。本心からそう思う。
ヴィルヘルミナの目的そのものはどうでもいいが、彼女に力を取り戻してもらうことは、僕にとっても重要だ。
いつまでも雑魚だけにかかずらってはいられないのだから。

「ねえ、いつまで見ているのかしら」
「……?なんの話だ?」
「私の服装を見て、少しは気を遣おうとは思わないのかしら」

服装?
言われて目線を彼女の胴体に向ける。
そこにあった、彼女が普段から着ている戦闘用とおぼしきドレスは、激しい戦いの余波からか、ところどころ破けていて、布の隙間からは白い素肌、スタイルの良い肉体が覗いており、下着も部分的に露出していた。
今日駆除した死徒は、雑魚の中ではそれなりに強力だった。未だ血を満足に取り戻してないヴィルヘルミナは、負ける事は無いまでも少々手間取っていた。その結果がこの服の損傷だろう。
なるほどと合点は行ったが、どうやら僕と彼女の認識には誤解があるらしい。
全く、一応一蓮托生ということで手を組んでるんだから、相方のパーソナリティくらい把握してほしい。

「ああ……そういうことか。だったら気にしなくていいよ。僕はキミに下心を抱いたりはしな」
「今から五つ数えるわ。それまでに後ろを向きなさい。向かなかったら、殺すわ」
「え」
「ひとーつ」

本気の殺意だった。
嘘だろ。
さすがにここで無為に命を散らすわけにもいかない。納得いかない心を押し留め身体の向きを変える。
空には、満ちている最中の三日月が僕の滑稽さを嗤っていた。
しかし、話を聞いた限りではヴィルヘルミナは人から死徒になったタイプではなく、産まれながらの死徒だったはずだ。
純潔。純血。純正。純粋。血統書付きの化物。
人の生活様式に合わせているのは、あくまで人間社会に馴染むためであり、それ自体に意味を見出しているとは思わなかった。
具体的には肌を見られたからと言って、羞恥や嫌悪を覚えるような感性は無いものだと決め込んでいた。
見た目こそ美しい少女の様相をしているが、内部はどうなっているか判ったものじゃないのだから。
これは完全に僕側の配慮不足、観察力不足である。どうやら想像していたよりも、彼女は高い人間性を持っているらしい。
くだらない反省点を頭の中で取りまとめていると、突然後ろから手を回された。
驚いて振り返ろうとすると。

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