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県西地域の活動の広がり

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報告書                     地域日本語教育コーディネーター
                                    宮本敏弥
県西地域の地域日本語教室の課題聞き取り調査
2020・12・23(水)

 県西の状況をまとめて報告します。
新型コロナウイルス感染拡大が進む中での調査であった。訪問、メール、電話でのやり取り等、多岐にわたる方法で調査した。それによって見えてきたことを簡潔にまとめ報告する。
外国人在留者の実態は表に記載の通りである。県西地区10市町の中で、外国人人口が2000人を超えている自治体が、6市。1000人超えは、2町。県西地区は非常に多くの外国人人口を抱えている。しかし、市民や行政には、生きた人間としての外国人の姿はみえていない向きも感じられる。
企業には技能実習生が大勢いる。その企業の受け入れ担当者は、監理団体が適切に対応しているから「困った問題はない」、との認識である。これは明らかに企業にとってのことであろう。大きな企業もあるが、監理団体に任せているから何の問題もないということでいいのだろうか。疑問が残る。
即ち、技能実習生にとっては、「学ぶ環境が整っていないのですが・・・・。」ということである。岩井にあるLIXILの総務課は、地域日本語教育のボランティの日本語教室を紹介すると「間に合っています。」という返事であった。時連れを総会すると、岩井から取手まで、1日かけてバスで通い、日本語を学んだ実習生(注1)がいるのだが、企業には見えていないのである。実際には「みようとしないのではないか」と疑念を抱かせるほどの対応ぶりである。
だれもが感じている技能実習生制度の矛盾が背景にある。もう、市民も行政も真実を見つめるべき時ではないかと思う。先ほど紹介した事例でも、「企業の担当者個人」がわるいのではないと思う。多文化共生社会を目指して解決すべき課題であろう。
(注1) 彼女はベトナム人からの技能実習生で、茨城県国際交流協会主催の2020年2月に実施された外国人にスピーチコンテストに出場した。彼女の学びを支えたのは地域日本語教室とそのボランティアの皆さんである。

地域日本語教室の特筆すべき点
1) 地域日本語教室の団体名
「国際交流協会」が存在するのは、古河市と結城市と桜川市だけである。
市と民間と連携して国際交流をとらえていないということから、行政の対応の遅れが窺える。
「国際交流友の会」という名称が多い。初めにボランティア活動を始めた方が、そのようにして始めたのであろう。そして、その活動の主旨を受け継いで、次々に同じスタイルの名前の輪が広がったようである。実例で考えてみよう。境町はアルゼンチン大使館と深い交流の歴史がある。境町のボランティアの方々は、茨城県国際交流協会の日本語教育アドバイザーのボランティア講師養成講座を開いた折りに、坂東市民に声をかけて一緒に学んだ。それが機縁で、「ばんどう国際交友の会」ができた。3年前の話である。現在、月2回日本語教室を継続している。(注2)
ボランティアの方々の独自性と、独立性、自律性のある活動の賜物である。
 また、市町の取り組みの遅れ、無関心がもたらした、偶然の産物であることも事実であろう。
とは言え、どちらかが「わるい」、「遅れている」と分析しているにではない。ボランティア活動と行政の連携は、まだまだ今日的で新しい課題である。県南地域で報告したように、30年の歴史を誇る国際交流協会の歴史であっても、実際には市役所職員の仕事として処理されてきた実態もある。(注3)
絶えず課題を発見し、発展している分野が、行政改革とボランティア活動の連携である。行政に、「市民協働」や「市民協働推進」などの表示が見えることにもそれは表されている。常総市で対応してくれた課は、「市民と共に考える課」であった。新しい未来社会創出への模索を、ここに見ることができるのではないだろうか。
(注2) 今年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い活動休止。
(注3) 牛久市の事例。

2)地域日本語教室のボランティア講師について
  ボランティア講師は、まったくのボランティア、すなわち無償で活動し、行政や企業からの支援が極めて少ない地域である。ボランティアの方もまた求めていない。それを、30年間も実践しているのである。考えさせられる事柄である。(理論よりも経験と実績)
  水海道国際交流友の会の荒井さんは、3か月に1000円学習者から申し受けている。これが活動資金である。勿論持ち出しもあるが、基本は必要以上の出費をしないで、外国人が日本語を学ぶ場を30年このかた維持していることである。ある意味では、自立したボランティア活動である。昨今の「予算措置がないとボランティア活動ができない」という主張とは異なる視点である。検討し、参考にすべき点の一つであろう。場所の提供が保障されれば、内容と人材はボランティアが担うということである。

  日本語教師の資格の取得状況についての調査をしたが、有資格者はわずかの人数しか存在しなかった。
  420時間の講習を受けた者、日本語指導を専攻し、大学を卒業した者、日本語教育能力検定試験に合格した者、通信教育で資格を取得した者がわずかにいるだけである。資格・経験を問わないでボランティア活動に取り組んでいるのが実態である。
その一方、茨城県国際交流協会の日本語教育アドバイザーによるボランティア講師養成講座を受講して実践指導に当たっている実態が見えてきた。県協会の日本語教育の講師無料派遣は、地域日本語教育の基盤を支えていることが分かった。
  皆さん、資格よりも、外国人への、市民ボランティアとしての援助が大事なのである。困っている外国人を、つぶさに見て援助しているのである。「生活者としての外国人」に教えるのと、留学生に教えるのでは異なる視点が欠かせない。これも検討課題の一つであろう。

3)地域日本語教室のテキストについて
テキストは「みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ本冊」が主流である。これは、今日までの茨城県国際交流協会の日本語教師派遣事業でのボランティア養成講座が、「みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ」を用いていることと結びついている。日本語教育における文法事項を文型と教え方の順序と結びつけて、「明日から使える教授法」として身に着けるには必要だったのである。(必要悪・・・?)
  最近は、各種シラバスに基づいた各種のテキストが市販されており、地域日本語教育でも、多様なテキストを用いている事例が見られるようになっている。茨城県国際交流協会の日本語教育アドバイザーも実物の各種テキストを準備して、その特徴と塚方を解説していることも役立っている。
  技能実習生にニーズ調査すると、日本語能力試験を受験したいという希望が聞かれる。そこで、日本語能力試験対応の問題演習もほとんどの地域日本語教育で取り上げるようになった。勿論、日本語学校ではないので、合格を保証するものではなく、受験を支援する立場での学習である。
  小学校、中学校に通う児童・生徒には、外国語としての日本語教育と、学校の授業教材を媒介にして授業するケースが多くなっている。
  水海道の荒井さんは、漢字の学習指導の取り組みをしているが、テキストは小学校の国語の教科書である。基本の授業が、「話すことを基軸に据えた授業形態」であることがポイントである。(現地を見学して「対話型授業」との比較研究が期待される。)

4)会場の無料使用について
  どの自治体でもボランティアでの地域日本語教育の会場は、公民館等市の施設を無料で提供してもらえる。公民館活動の管理を担当する館長も、社会福祉協議会の方もボランティアでの日本語教育の会場は無料で提供できますと即答される。県西地域ではこの点での理解と許容する判断が行き渡っているように感じた。
  課題は、定期的に申し込まなければならない事情の市町村もあることである。これを市(行政)の仕組みとして、年間予約ができると地域日本語教育のような定期的で継続性の高いボランティア活動には都合がよい。是非、この年間予約制度は実現していただきたい。
  これと併せて、施設利用のルールについても見直しをお願いしたい。公民館やコミュニティーホール、文化会館などの施設の種類によって、使用規定も異なっている。無料で使えれば、どこででも日本語の学びはできるのだが、教材の置き場、格納場所の有無は活動に影響する。教材、教具を置く場所が利用できるように改善していただきたい。

5)監理団体について
  県西地域でも監理団体は多い。一覧表に基づいて2~3電話取材したが、扱い国の技能実習生の入国後1か月の研修は行う。その後は企業に入って仕事についています。帰国時まではそれほどの監理をしない監理団体もあるようである。情報の提供は拒まれたが、一番情報を持っている機関であるはずだ。企業、監理団体、市の住民登録の際の情報と個人情報が含まれるのではあるが、どこかでリンクさせて人権を守り、日本語の学習機会や日本文化の学びができる等の工夫が待たれる。地域日本語教育の体制整備事業を進めるにはどうしても取り組まないと深みのある活動はできない。そうしないと、特に言語保障、生活者としての外国人への情報提供、安心・安全な日常生活の保障が滞る。
  ボランティアの立場からは、なかなか、技能実数制度の矛盾を指摘し、核心に触れて議論することまではできない。県行政ならばできるはずである。現政権への政治的配慮から目をつぶり、不問に付すことも考えられるが、真実を追求するならば避けては通れない課題であることを指摘しない訳にはいかない。監理団体をブラックボックスにしているのが現状である。
  人権問題は、常に考えていないと問題の本質は論じられない。言語保障、母語の継承、多言語対応の努力など言葉の障壁を破る課題がまずは取り上げられなければならないだろう。

6)授業形態の研究課題
※ 個別のレディネスやニーズ調査の結果に対応して、少人数やマンツーマンで実施している。少数のクラス形態での学習も見られる。

事例研究01・・・筑西市  テキスト「みんなの日本語初級Ⅰ本冊」
  学習者 40名   Aクラス    1~8課
            Bクラス    9~19課
            Cクラス    20~25課
① 難易度の分割
② 人数の分散
③ 講師の受け持ち範囲の限定
④ 講師の負担の軽減
⑤ 学習者の変動の調整
⑥ 学習者のニーズに近いクラス分け

事例研究02・・・常総市  テキスト「小学校の国語教科書」
  学習者 10名    20分 漢字書き取学習
             70分 会話中心の授業   談話力重視
  講師の力量・・・・薬剤師 通信教育で日本語教師 ポルトガル語・英語学んでいる
※ 外国語学習の科学と視点 
教授方法・・・・・談話・会話中心の話せる日本語の指導 

7)新型コロナウイルス感染の影響について
2020年は新型コロナウイルス感染防止で休講せざるを得なかった
  講師が高齢であることもあり、感染防止対応にはきわめて積極的であり、教室開講には極めて慎重であった。
  また、オンライン開催には、ハード面でもソフト面でも、知らないことも多く、不安内だった。従って、積極的に利用するには至らなかった。
  一般に、講師も学習者も、オンラインでは参加者が減少する。
 WIFI環境の未整備、PC、スマホ、タブレット、等端末もさまざまである。ラインは普段から使っているが、ZOOMは使った経験がない、トラブルが起きやすい等、事情は様々であるが、参加者は減っている。
 オンライン授業の開発・実施は地域日本語教育の課題の一つであろう。感染防止のために、今回は休止したケースが県西地域では圧倒的に多かった。

8)国際交流協会設立の動き
  現在、古河市、結城市、桜川市に存在する。下妻市でも設立準備が進んでいる。
  民間の力を活用し、町づくりに生かすにはよい。そのための一つの方法ではある。しかし、その形態は様々であり、県行政が力を入れて展望を開くとよい課題である。概して県北は、早くから国際交流協会を立ち上げたが、市役所職員が実質を担っている。市の業務にすぎなくなっているのが実態である。民間への移行が課題であろう。
  市民協働の方向付けをしていく必要がある。町づくり、地方創生、多文化共生社会創設、等と結びつけた新たな展開を模索すべき時期かもしれない。総合調整会議での課題であろう。
(まとめの視点から)
 県北・県央の調査はこれからだが、国際交流協会のあり方のついては全県的な視点で見直しが必要であろう。
県北・県央  自治体主導型 自治体肩代わり型      那珂市 
県南     民間主導型の典型事例           龍ヶ崎市 取手市 守谷市 
       県北型・・・・牛久市 市役所職員代行型
       守谷市・・・・経理問題で自治体職員が不正を働いた経緯がある

9)ボランティア保険について
「ボランティア保険」の件ですが、先々のこととして考えておく必要があると思います。
まず、この保険はボランティア及びボランティア団体が加入し、補償はその加入者が受けます。即ち、日本人ボランティアが中心となります。分かり易く言えば、日本人ボランティアは補償を受けられるが、同じ時刻に、同じ空間に居合わせた外国人学習者は、補償を受けられないということです。
外国の方も、日本の方も補償を受けられる加入の方法はあります。たとえば、「行事保険」という名称の保険に加入すると、いいのです。しかし、それには、26,880円かかります。講師と学習者と20名までカバーできます。人数をふやせば、30,000円で加入できます。この予算あればできるということですが、ボランティア団体には費用がありません。これを制度設計し直して、改善していく必要があります。

10)総合的な印象について
 今回の調査得は、貴重な情報や体験ができた。
① 県西に市民には、生活者としての外国人が多い。
② 県西に市民には、ボランティアに取り組む意思を持った方が多い。
③ 会場の無償供体制はあるが、行政部門それぞれの縦割り体制と区分が強く、横の連携が不足している。ボランティアへの評価と信頼がまだ低い。
④ 各市町村の教育委員会が自閉的な体制である。県のグローバルサポート体制は活用するが、ボランティア団体との連携に遅れがみられる。文部科学省の「外国人児童生徒受入れの手引(改訂版)」は読んでいるが、実行できていない。
⑤ 国際交流へ向けて、市民が協力しようという機運があるが、行政がそれをとらえていない。
⑥ 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、「生活者としての外国人」の中にも職を失しなった者がいること、職場での労働環境が悪化しているケースがあること、難民の在留資格では職場で差別も受けていること、等々を行政が知らないでいる。
⑦ 地域日本語教育の課題は、自治体の多文化共生の社会を目指した課題遂行の基盤をなしていると感じられた。
                                   以上

刀水手帳
作成: 2021/01/03 (日) 06:40:36
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 宮本さん、いつも投稿をありがとうございます。お話が大きくなってきたようで、これを見たボランティアの方がついてこられるか心配です。この掲示板は、日本語支援ボランティアさん一人一人が、気軽に、ご自身の活動を紹介したり、交流したりすることを目的に開設しました。しかし、掲示板への投稿は多くのボランティアさんにとってハードルが高いということも、だんだんわかってきました。それでも、皆さんが交流して、よりよい活動につながれば、と思ってやっています。
 宮本さんの調査の中に出てきた方々の声が、直接、この掲示板に出てくるようになれば、と思います。どうぞよろしくお願いいたします😌