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ジャッジが見た平成3年度F3A日本選手権

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F3Aパターン演技の判定について、古いRC技術誌に興味ある内容が載っていたので、こちらをご覧ください。
1991年8月号の「ジャッジが見た平成3年度F3A日本選手権」という記事です。

注目して欲しいのは最後の項目ですが、33年前の状況を知る為に、全文引用します。
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●技術点と芸術点
[KN]: 現在のFAI F3A規定の演技は、技術点に芸術点を加味して採点されます。 フィギュア・スケートを見れば分かるように、一般には技術点は技術点、芸術点は芸術点というように別々に採点していますが、F3Aではこの両方を合わせて採点しています。 ですから私の考えとしては、F3Aではまず技術点を完璧に取ることが大切だと思います。 すなわち、基本に忠実で、平行度、垂直度、円ものならその大きさ、これらが終始一貫していること。 これができて初めてその上の芸術点を問うことができるわけで、基本もできていないのに成家選手のロールをマネしようとか、こういうことは二の次、三の次。 きちっと基本を押さえれば自然にその人の個性も生まれてくるわけです。 一番の愚の骨頂は、いま言ったように他の選手の特徴のある飛ばし方をまねることで、これがもっとも遠回りな道だと思いますね。 少なくともオール7点なら、基本に忠実で、いま言ったような平行度、垂直度、ジャッジが見やすい位置で演技しているか、これらに気をつければ楽に取れると思います。
[IU]: 要するに位置取りですよね。 それがまず基本なんです。
[KN]: よくクラブに自分より上手な人がいないからうまくならない、なんて言う人がいますが、そんなことはないんですよね。 自分より飛行技術が未熟な人でも、たとえば垂直だけ見ていてくれとか、こちらの要求をきちんと伝えれば、充分にアドバイスをしてく れるはずですから。

●演技に共通して見られた欠点
[IU]: 今年は現行ルール最後の年ですから、演技はほぼ形になっていると思うんですよ。 そつなく飛ばしてはいますが、しかし共通の欠点も出ています。 たとえばインメルマン・ターン。 関東より北の選手は、ルール通り半円を終えてからロールしていますが、関東よ り南の選手は半円を終える前にロールしています。 関西のほうがロールでは楽をしていますね。 後の処理が楽なんですよ、こういった地域的な違いが目につきました。 ルールでは半円を描いた直後にロールするとなっていますが、後者の場合はロールを終わった位置が半円の終わりなんです。 このほうが楽ですけれども、楽して点は取れませんからね。 また、キューバン・エイトの昇りと下りの角度が浅かった選手が多かったようです。 ハーフキューバンの下りは45°でなくちゃいけない。 ところが真横から見ればたしかに45°かもしれませんが、ジャッジ席から見ると明らかに浅いんですよ。 関西の選手は角度が正確で、その前後にきちんと直線を見せている選手が多かったんですが、関東はたとえばリバース・キューバン ・エイトだと、ロールしてすぐに半円に入ってしまう。 だからロールの後の直線がない。 と言うことはつまりロールが遅れているということですね。 これは両端の演技で係数が低いために、 “おざなり”にしているんですね。 おざなりに済ませて次のフォーポイントにそなえる、という傾向が見られましたね。
[KN]:  来年からはルールが変わりますが、変わっても同じことが言えると思いますよ。 選手としては、いま言ったように係数の高い真ん中の演技を重視するために、両サイドの演技は意外におざなりにしているようですね。 でも、ジャッジの心理としては、端の演技で8点や9点を取ったとした場合、次の真ん中の演技がたとえ4点や5点だとしても、ちょっと4点や5点はつけにくい。 たとえそれが5点の演技でも、5.5や6点をつけてしまうことは可能性としてはありますね。
[IU]:  このへんのジャッジの心理も、選手は研究したほうがよいでしょうね。

●ロールの前後の長さが異なる
[IU]: それとスピンに入る前の1回ロールのハーフスクエアがありますね。 これがどの選手も、下側が長くてロールしたあとペタンとつぶれちゃう。 上側の直線がないわけです。 ロールの上下の直線を同じ長さにしなければいけないのは、言うまでもありません。 にもかかわらず、下の直線が長いために、ロール後はパワーがなくなりへたってしまう。 それでペタンとつぶれてしまうんですね。 この演技で良い点をつけた選手は、ほとんどいませんでしたね。
[KN]:  それにしても現行ルールはすでに4年たち、これだけ飛ばし込んでいるにもかかわらず、日本選手権に出場している選手でさえ、中級者、上級者の少し下くらいのレベルの人の犯す欠点が軒並み出ていますね。 とくに第1ラウンドは欠点だらけでした。 これは演技がよく分かっていないとしか解釈のしようがありませんよね。
[IU]:  とくに演技と演技のつなぎが良くありません。 さっきの話で言えば、キューバンエイトの角度があまいと、すぐにトライアングルにはいっちゃうわけです。 直線がないんですよ。 つまり、「ここで演技は終わりです。 ここからスタートです」と口で言わなくても、フライトでジャッジにアピールしなくてはいけないわけです。 そこで初めて演技のメリハリというのも出てくるんです。 直線を少しでも見せて次の演技に入ってくれれば、ジャッジが6点にしようか7点にしようか迷っているときに、演技の“出”でピシッと決めてくれれば、良いほうにつけてしまうと思うんですよ。 “入り”もビシッと見せてくれて、上の演技もそこそこにできれば、それも良いほうにつながると思うんですよ。 このへん、各地区代表の人にしてはオソマツだなあ、という選手が半数以上じゃないですか。 それでも上位の選手はいいところを見せていますよね。 そこで点差が開くんだと思いますよ。
[KN]:  これから演技が新しくなったとしても、共通して言えるのは、たとえば1回ロール入りのハーフスクエア・ループ。 これは新ルールにまったく同じものがあるかどうか分かりませんが、要するに水平がきちっと出ていないために、垂直に引き上げたときに傾きが一発で決まらないわけですよね。 そのために、右に傾いたら左に修正する、左に傾いたら右に修正する。 で、モタモタしているうちにかなりの高度までスーッと上がってしまう。 ここで1回ロールをするとブレーキがかかって機速がなくなっちゃうわけですよ。 垂直で伸ばそうと思っても、力がなくなってヨタヨタしてますから、早いとこ水平にもっていってしまおうとするわけです。 ですから、ロールする前の垂直の距離に比べて、ロール後の垂直の距離は半分、あるいは3分の1くらいになっているのが多かったですね。 これと同じことがリバーストップハットにも言えます。 まっすぐ垂直に下りたかどうか探っているうちに、ロールが遅れちゃうんですよ。 で、垂直降下があるかないかのうちに地面が近づくために水平に抜ける。 次の上昇もまた、傾いたかどうか搾りながら上げるためにロールが遅れてしまう。 スピードがなくなるためにロール後はパタンと水平に戻らざるを得ない。
[IU]: 一つの演技で2ヶ所、ロールの高さが違ってくるわけですね。
[KN]: 角のアールも力がなくなってすぐにパタンとやるから、小さくなりますね。

●“6角”の角度が不均等
[KN]: いま述べたのはリバーストップハットの例ですけれども、上昇・下降にロールが含まれている演技は、来年から実施される新ルールにも当然あります。 機首が下を向いたときに怖いためか、6角宙返り (シックスサイデッド・ループ) でも悪い例が多いですね。
[IU]: 1回めの角は60°か少々強いくらいの選手が多いんですが、2回めは必ずと言っていいほど45°になりますね。 こうなるとその後の水平と角が出なくなる。 フワッと丸くなってしまう。 その次はもち直して60°で上がるんですよ。 で、最後の斜めはまた45°になっちゃう。
[KN]: 2回めの角は90%以上の選手が45°になっていましたね。 これは地面に近くなって怖くて45°で逃げるのか、あるいは60°と信じてやっているのか分かりませんが。 また、底辺が長すぎる選手も多かったですね。 底辺から上昇した後の辺が長い選手も多く、これも最後の角が45°になってしまう一つの要因でしょう。 長くなるのは、やっぱり探っているからでしょうね。 こういう共通で犯す欠点が、アドバンスやエキスパートクラスではなく、日本選手権クラスの選手にも見られたのは驚きですね。
[IU]: コブラ・ポイント・ロールの昇りのロールも遅く、下りもまた遅いために左右のロールが同じ高さになっていませんね。 このような対称の演技は、ロールのポイント位置が同じでなければいけません。 角度も、昇りがきつくて下りが緩やか。 滑り台のような形になっています。
[KN]: トライアングルの下りも、30°くらいの選手が多いですねえ。今回も半数の選手が30°で下りていました。 ルールでは45°でなければいけないわけです。
[IU]: いずれにしても、上位の選手はこのへん上手にやってますよ。

●ジャッジ席から見てどうか
[IU]: 演技はすべて、ジャッジ席から見た形で判断されます。 あくまでもジャッジから見て円は円、角は角でなければなりません。 ここを勘違いする方がいて、昨年行った地方の大会では、模型店のおやじさんが「上から見れば円は楕円に見えるんだ。もっと横長にしろ」なんてアドバイスしているのを耳にしたことがあります。
[KN]: いや、それは地方だけではなく、 関東地区の1次予選を通った人でも同じようなことを言ってましたよ。 あくまでジャッジが見てどうか、が基本ですから。 極端なことを言えば、土手の上から見て正円に見えても、ジャッジの真上で演技していればジャッジには1本の線にしか見えません。 やっている演技が真円でなくても、ジャッジにとって真円であれば良いわけです。
[IU]: 真下から見て円が傾いても、ジャッジ席から見て真円であれば高得点がつくということですね。
[KN]: それと演技のコースについて申し上げておきたいことがあります。 演技位置が仮にジャッジの前方150mだとすると、両端の左右60°のフレームの延長線上ではジャッジから300mの距離を飛行することになります。 そのため、飛行機がまったく同じ高度で飛んだ場合、ジャッジには中央では高く、両端では低く飛んでいるように見えます。 まったく同一の高度を飛んでいても、これでは水平直線飛行とは言えません。 上手な選手ほど自分のスティック感覚を信じていますから、ピッタリ水平に飛んで行きますね。 しかしジャッジには水平に見えないんです。 ゆっくり下がりながらスプリットSに入るように見えます。
この点、初・中級クラスのフライヤーのほうが飛行機を見ながら飛ばすので、ジャッジから見た水平直線飛行に近いようですね。
[IU]: これを防ぐには、両端を少し上がり気味にするか円弧を描くしかあり ませんが、円弧を描くと両端が近くなる分だけフレーム・オーバーしやすくなりますね。 いずれにしても、このヘんがちょっと飛ばせるようになると陥る、共通の欠点ですね。
[KN]: 演技はすべてジャッジから見たフライトをもとに採点されます。 この点をくれぐれも忘れないようにしてほしいと思います。
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以上

denkado
作成: 2024/03/23 (土) 18:40:27
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続けていたなら凄いことです!

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denkado 2024/03/23 (土) 20:01:57

30年以上も前なので、飛行の正確さを見極める道具はありませんでした。
それでもビデオカメラや助手の手を借りて正確さを求めていた人もいたのですが、それは見事に否定されていますね。
凄い時代でした。

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やっちゃんこたろう 2024/03/24 (日) 09:57:43

競技を成立させるには、いつの時代もジャッジの判定を尊重することが、必須であることは理解しますが…

幾何学的に正しく飛行すると、どう見えるのかを信頼の出来る方法で何度も再現させる、
判定の練習を繰り返すことができる環境が、作ることが出来る時代になりました

ジャッジ目線から見たときに幾何学的に正しい図形(一部演技を除く)がどのように見えるのかを実際に飛行させて 目視で確認することができるようになりました
(実験段階ではありますが)

実際に具現化するのは大変だと思います
上記環境の普及/ジャッジング力の向上の取り組み

運営関係の方のご努力と労力 競技者の要望•期待が交錯する世界
それでも、期待してしまいます

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1998年発効の監修/日本模型航空連盟・規定委員会のFAI Sporting Code 1997~2000 日本語版が手元にありましたので開いてみました。
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F3A曲技飛行競技のための特別規則および審査手引きという付則があります。
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この付則のなかで宙返りについて以下のように記載されています。
「4.3.2. 宙返り
宙返りという飛行演技は、一定の半径を維持しなければならない演技であり、また宙返りの開始時から終了時までの間において仮想垂直面を飛行しなければならない演技であると定義することができる。」
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仮想垂直面で一定の半径を維持した演技をすればジャッジ視点では真円には見えないですよね。

30年前のSporting Codeは見つけることができずFAIのサイトのアーカイブにある一番古いのが2006年版でした。
https://www.fai.org/document-compression/52258
そちらを見てみますと以下のように書かれています。
5B.4.3.2. LOOPS
A loop must have, by definition, a constant radius, and must be flown in the vertical plane throughout.
2024年度版で項目番号が5B.8.4.に替わっていますが同じように表記されています。
https://www.fai.org/sites/default/files/sc4_vol_f3_aerobatics_24.pdf

30年前の情報は見つけられていませんが、"仮想垂直面での図形を評価する"が 昔からのFAIの公式見解だと思うのです。

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denkado 2024/03/28 (木) 21:15:21

冒頭の33年前の話からすると、水平飛行はこの赤線の様な感じという事でしょうかね。
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また、当時のF3Aフライヤーさんから聞いた話ですが、
「水平飛行は降下しながら侵入する様に」と、先輩から教わっていたそうです。

飛行コースの延長上や真下に行って飛行ぶりを見て、その異常さに気づく人もいたはずですが、これがF3Aスタントの飛ばし方と言われればそれまでだったのでしょう。
教育というものの恐ろしさです。

ただ、不自然なフライトはどこかに矛盾が生じてしまうので、それは時間の経過とともに修正され続けて来ました。
現代のフライトを見ればその結果が良く分かります。

左上がテンプレートですが、それ以外のフライトもテンプレートに近くなっています。
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denkado 2024/03/29 (金) 16:52:48

平面の円を斜めから見ればどう見えるかは、小さい頃から学んでいて、誰でも身につけている事です。
テーブルに置いた皿もそうですが、壁には時計があります。
これらはすべて真円です。
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それとも、この赤丸が壁にあっても真円でしょうか。
壁にあるとしたら平面ではなく、球ですね。
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