オートファイター 蛇の目リトさんのアイデア 裏世界(裏社会?)のマッチョが恋愛してたと思ったらただの便利屋として扱われてただけの話
「おうおうおうおう!ここをただで通らせるわけにはいかねぇなぁ!?」
この決まり文句も、ヘビくん相手に何回言ったっけ?とにかく、回数も覚えてないくらいにこのヘビくんと会ったことがある。そこが重要だ。今では俺を見つけるとすぐに近づいてきてくれるようになったし、戦うようなぶっそうなことはせずいつも工具を買ってくれる(後払いだけど)。
ただ会いに来てくれること、それだけのことが俺にはすごくうれしかった。両親の顔も知らず、読み書きもろくにできず、目につく人すべてにケンカをふっかける毎日。捨て子としてスラムで生きてきた俺には、人のあたたかさというものを初めて教えてくれた存在だからだ。
「ん、取引か?しゃあねぇなあ、どれが欲しい?」
いつも通りに、商品を見せる。相場500~600円の工具3つで2000円とは、なかなかあくどい商売してるよなぁと自分でも思う。でも、商人が少ないダンジョンではこれくらいが普通だよな!
ヘビくんは、今日はたいまつを選んだ。客が二番目によく買ってくれる商品だ。えーと、「しゃくようしょ」を書き込んで...
「よっし!借りたからにはしっかり返してくれよな!また今度!」
いつも通りに、別れの挨拶。一分にも満たない会話の中で、今まで生きてきた時間で味わったことのないよろこびがあふれてくる。人と話して関わることって、こんなにいいことだったんだ。
ところが、最近は何か違うことを感じるようになった。今まではこの少しの時間で満足できたのに、「まだ行ってほしくない」という気持ちが日に日にふくらんでいる。
昔、とある町の屋外劇場でみた物語を思い出す。”どれい”としてひどい目にあっていた女の子が、お金持ちの男の子と恋に落ちるという物語だ。
今、その劇の男の子を見ているときとおなじ気持ちがする。すてきな人にであって、あこがれて、もっといっしょにいたいと思う。恋ってこういうことなのかな?
でも、今は心にしまっておこう。また明日、ヘビくんと会えなくなるかもしれないから。この気持ちが、もっと大きくなった時に伝えよう。いつも通りが、いつも通りじゃなくなってしまわないように。
「おうおうおうおう!ここをただで通らせるわけにはいかねぇなぁ!?」
このマップも、もう何回訪れたっけ?とにかく、回数も覚えてないくらいにこのマップにたどり着いたことがある。それが重要だ。今ではこいつにすぐ話しかけて取引をし、特に時間もかけず簡単にアイテム回収・地下ダンジョンへ行けるようになった(そこまでおいしいマップではないけど)。
ただ地下に行けること、それだけのことがこの旅にはすごく喜ばしいことだった。地上マップを早々に捨てて、工具もろくに持っておらず、常に効率を求めて地下をさまよう毎日。転生できるヘビとしてこの砂漠で生きてきた身としては、地下ダンジョンはもっとも稼げるマップと知っているからだ。
「ん、取引か?しゃあねぇなあ、どれが欲しい?」
いつも通りに、商品を見る。相場500~600円の工具3つで2000円とは、なかなかあくどい商売してるなぁと思う。しかし、商人が少ないダンジョンではこれくらい我慢していなくては貿易は続けられない。
燃料や木材もあまり持っておらず、バールも複数個持っているのでたいまつを選んだ。二番目によく買う商品だ。借用書を受け取り、流れ作業でサインする。
「よっし!借りたからにはしっかり返してくれよな!また今度!」
いつも通りに、旅は進んでいく。この長い命の中で、今まで歩んできた道よりも効率的な方法を編み出した。裏取引して腕力を上げて地下に潜るなんて、以前では考えもしなかったな。
ところが、最近は何か違うことを感じるようになった。今まではこの普通の貿易だけで満足できたのに、「何かが足りない」という気持ちが日に日に膨らんでいる。
昔、雲の上で建設した建物を思い出す。端のほうに建てられた、墓地のような建物だ。
今、この生活にマンネリ感を感じている。刺激的なことに出会って、苦戦して、もっと自分を高めたいと思う。成長ってこういうことなのかな?
でも、今は挑戦はやめておこう。資材や鉱石だってそろってないし、まだすべての鉱石を手にしたわけじゃないから。この貿易の果てに、もっと大きな目標を達成したときに挑戦しよう。結界解除が楽じゃなくなってしまわないように。