仏教のお話

Rの会:法華経序品第一 / 7

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ダルマ太郎 2024/04/11 (木) 15:26:57 修正

疑念序

弥勒の疑念

爾の時に弥勒菩薩是の念を作さく、今者世尊、神変の相を現じたもう。何の因縁を以て此の瑞ある。今仏世尊は三昧に入りたまえり。是の不可思議に希有の事を現ぜるを、当に以て誰にか問うべき、誰か能く答えん者なる。復此の念を作さく、是の文殊師利法王の子は、已に曾て過去無量の諸仏に親近し供養せり。必ず此の希有の相を見るべし。我今当に問うべし。
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これらの奇瑞(瑞相)を見た弥勒菩薩の疑問

その有り様を見て、弥勒菩薩は考えました。
「世尊は今、不可思議な力をお示しになって、このような光景を現わされた。これは一体どのような意味があるのだろうか? 世尊にお伺いをしたいが、世尊は三昧に入っておられ、お尋ねすることができない・・・。一体、誰に聞けば、このことを正しく答えてくれるだろうか・・・?  そうだ。世尊のお心をよく知り、過去世において数えきれないほどの諸仏にお仕えしたことのある文殊菩薩ならば、きっとこの不可思議な光景を見たことがあるに違いない。よし、文殊菩薩に聞いてみよう」。弥勒菩薩はそう考えついたのでした。

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その時に偉大なるマイトレーヤ菩薩は、このように考えました。
「今、世尊は、不思議な現象を現わされました。このことで何を教えて下さっているのでしょう? どういう理由があって不思議の力を表わされたのでしょう? 今、世尊は深い瞑想に入っていて、この理由を質問することができません。この不可思議な出来事が起ったことを一体誰に問えばいいのでしょう? 誰が分かりやすく答えて下さるでしょう?」。

また、このようにも考えました。
「ここにおられるマンジュシリー法王子さまは、これまでの過去世において、無量の諸仏に仕えて、供養をし、修行をされたと聞いています。おそらくは、この珍しい出来事についても、過去に体験されていることでしょう。私は、今、マンジュシリー法王子さまに質問してみましょう」

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大衆の疑念

爾の時に比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷及び諸の天・龍・鬼神等、咸く此の念を作さく。是の仏の光明神通の相を今当に誰にか問うべき。
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その時、出家・在家の修行者をはじめ、天人・竜神など、その座に連なる全ての者たちも弥勒菩薩と同じ疑問を持ち、この不可思議な現象の真相を、誰に聞けばよいのかと考えていました。
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その時、この集会に集う男女の出家修行者、男女の在家修行者、そして天上界の神々、ナーガ、鬼神など、多くの者たちがこのように考えました。
「この仏さまの光明による不思議な出来事を、今、誰に問えばいいのでしょう?」

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  • 8
    ダルマ太郎 2024/04/11 (木) 15:45:36 >> 7

    発問序

    爾の時に弥勒菩薩自ら疑を決せんと欲し、又四衆の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷及び諸の天・龍・鬼神等の衆会の心を観じて、文殊師利に問うて言わく。何の因縁を以て此の瑞神通の相あり、大光明を放ち東方万八千の土を照したもうに、悉く彼の仏の国界の荘厳を見る。是に弥勒菩薩重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を以て問うて曰く。
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    すると弥勒菩薩は、その者たちの心中をハッキリと分かりましたので、弥勒菩薩は自らの疑問を解決するだけでなく、この者たちの疑問を解かなければならないと思い、文殊菩薩に向かって尋ねたのでした。
    「文殊菩薩よ。世尊の眉間から光を放たれて、不可思議な世界が現出するのは一体なぜですか? 曼荼羅華(まんだらけ)が天から降り注ぎ。栴檀(せんだん)の香風がそよいで、人々の心は喜びに満たされています。そればかりか、はるか『東方の世界』も照らし出されて、すべてを目(ま)の当たりにすることができます。こうした現象が起きているのは、一体どのような意味があるのでしょうか」

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    その時にマイトレーヤ菩薩は、自分自身の疑問を晴らしたいと思い、また、多くの人々の心を察して、マンジュシリー菩薩に問いました。
    「何の理由があって、世尊は、この珍しくも、ありがたい神通力を現わされているのでしょうか? 世尊は、大いなる光明を放って、東方の多くの国土を照らし、ことごとく他方の仏さまの世界の素晴らしさを見せて下さっています」

    ここで、マイトレーヤ菩薩は、詩にして、もう一度、マンジュシリー菩薩に問いました。
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  • 9
    ダルマ太郎 2024/04/11 (木) 16:09:04 >> 7

    此土の六瑞を問う 1

    文殊師利 導師何が故ぞ
    眉間白毫の 大光普く照したもう
    曼陀羅 曼殊沙華を雨らして
    栴檀の香風 衆の心を悦可す
    是の因縁を以て 地皆厳浄なり
    而も此の 世界六種に震動す
    時に四部の衆 咸く皆歓喜し
    身意快然として 未曾有なることを得
    眉間の光明 東方万八千の土を
    照したもうに 皆金色の如し
    阿鼻獄より 上有頂に至るまで
    諸の世界の中の 六道の衆生
    生死の所趣 善悪の業縁
    受報の好醜 此に於て悉く見る

    :
    :
    文殊菩薩よ
    世尊の眉間から光を放たれて 不可思議な世界が現出するのは一体なぜですか? 曼荼羅華(まんだらけ)が天から降り注ぎ 栴檀(せんだん)の香風がそよいで 人々の心は喜びに満たされています そればかりか はるか『東方の世界』も照らし出されて すべてを目(ま)の当たりにすることができます こうした現象が起きているのは 一体どのような意味があるのでしょうか 私たちは 人間の住むあらゆる世界で 六道を輪廻する人が 生まれ変わりして善悪の行為を重ね そして その報いを受ける姿を 目の当たりにすることができました

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    :
    マンジュシリー菩薩さま
    導師はなぜ
    眉間から大いなる光を放ち
    世界を照らされているのでしょうか?
    天上界から 珍しく美しい花々をふらし
    センダンの香りを漂わせて
    人々の心を悦ばせています
    このことによって 大地も人々も
    厳かで穢れがありません
    しかも この世界が様々に震動しました
    その時 人々は誰もが歓喜し
    身も心も悦びを感じ
    ありがたい現象を体験しました
    眉間の光明は
    東方の多くの世界を照らし出し
    その世界を 黄金色に浮かび上がらせています
    阿鼻地獄から 有頂天にいたるまで
    様々な世界の中の迷える人々の
    事物・現象が因縁によって起こっているということ
    善悪の行為とその縁となるもの
    報いによって 好い状態、醜い状態に
    環境が変化することを
    ここに居ながらにして ことごとく見ました

    :
    :

    12
    ダルマ太郎 2024/04/11 (木) 19:53:06 >> 9

    偈頌(げじゅ)
    :
    偈頌は、ガーター gāthā の訳です。偈ともいいます。意味は、「歌・詩」です。散文(長行)で説かれた内容を詩の形式で繰り返しています。偈を説く前には、「爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言」(爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく)というように告げます。サンスクリット語の偈は、次の通りです。これは、序品の偈です。
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    kiṃ kāraṇaṃ mañjuśirī iyaṃ hi
    raśmiḥ pramuktā naranāyakena|
    prabhāsayantī bhramukāntarātu
    ūrṇāya kośādiyamekaraśmiḥ||1||

    :
    māndāravāṇāṃ ca mahanta varṣaṃ
    puṣpāṇi muñcanti surāḥ suhṛṣṭāḥ|
    mañjūṣakāṃścandanacūrṇamiśrān
    divyān sugandhāṃśca manoramāṃśca||2||

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    サンスクリット語の偈では、偈の番号がつけられています。一つの偈は、8音節からなる句を4つ並べた32音節から構成されています。この形式をシュローカといいます。韻を踏むことはなく、シュローカと音節の長短が重視されます。漢訳すると当然ながら偈のリズムは取れません。
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    文殊師利 導師何故 眉間白毫
    大光普照 雨曼陀羅 曼殊沙華

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    というように、漢訳では4文字や5文字で構成しています。
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    YouTubeで、法華経の偈を探してみましたが見つけることができませんでした。ゴータマ・ブッダを讃える詩がありましたので、参考のためリンクを貼っておきます。シュローカの雰囲気はつかめると思います。
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