塀の後ろから女が現れ、男の側にやって来た。
「息災でなにより」
「お前カ」
女は、この地の稲荷頭――お沢稲荷。
そして男は、先代の頭であった。
「頭は私が継いだんだ。大人しく隠居していれば良いものを」
「ソウ言うな。コンナなりデモ相手してクレルのは、子供グライだ」
なおも不服そうなお沢を、男が遮った。
「お前、引退シタラ、やりたいコトはアルか?」
「……わからないな、そんな先の話は」
男は、当惑するお沢に、気遣うような眼差しを向けた。
「精々、早ク後進に譲ルコトだ。俺のヨウにナッテハ、旅行も出来ン」
「それで町の“散歩”か……邪魔をした」
お沢は片手を上げ、去って行った。
男も、また足を引きずりながら、通りを歩き始めた。
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旅行もできんなんてつれないこと言ってるけど、たくさん世話を焼いたからこそのこの姿。
旅行に行きたがってるぞと、耳に入れば助けられた御狐たちが我も我もと世話焼きにくること間違いなし!
身体を壊して大変かもしれないけど、そうならなければ見えない地平もあるわけで・・・なんてことを思いましたで!
ありがとうございました!!
狐たちが駕籠でえっさほいさ(かわヨ
先代は他人の手を煩わせるのが嫌で、周囲もそれをわかってるから
過剰な申し出はしにくい、なんてこともあったりして。
それは、デイサービスが来ているのに「おれ行かね!」とヘソ曲げてる年寄りと、玄関でどうしようとたむろってるデイの人たちを思い出すので素直に行ってほしいゾヨ
あ~そういうこともありますか😅
まあ先代に関しては、自分からあれこれ要求しないだけで、
相手の厚意はきちんと汲み取って受け入れると思います。
なんでしょう、身体を壊してから可愛げのある病人とそうじゃない病人の違いとか壊したからこそわかる振る舞い方とかわかっちゃって。
先代は可愛げのある病人路線でいてほしい~~
偏屈とかでは全然ないですよね。
足ることを知っていて、それこそ穏やかな暮らしが一番という感じ。