ザワッター　-zawatter-

大学二回生の秋、私はついに、片思いしていた後輩と付き合うことができた。まともな恋愛は、生まれて初めての経験であり、自分がこれほどの幸福を味わえることが信じられず、空を見上げて呆然とすることも多かった。私はまさに有頂天であったのだ。しかし、さらに信じられなかったのは、ようやく成就させた悲願にも関わらず、次第に私の心が平静を取り戻していくことであった。そればかりか、他の女も求めるようになった。どれだけ幸福を追求しても、快楽に適応していずれ餓えるということだろう。私は心底失望する思いであった。かつて欲情していたはずの豊満な女体が、醜い肉の塊にしか見えず、私を構成する諸々の欲望すらも、邪魔な生理的反応だと感じるようになった。もはや人生そのものが、山頂へ岩を転がすが如く、なにか徒労のようで、私は死にたくなった。