真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 46

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ちゃむがめ 2021/07/01 (木) 20:16:13 修正




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「アザミ教会から革命の宣戦布告…?」

古き良き街並み(ストリート)を練り歩く緩やかな人の流れが窓から窺えるのはミーバネルチャ中央街に店を構える喫茶店の中、向かい合い会話をするのはミーバネルチャ治安管理局の若き局員達。

「そう!というか玲羽、今日のテレビ見てなかったの?」

「基本おれ、テレビ見ない派だから。」

「それでも治安管理局か〜!って上官から怒られちゃうぞ〜、全く…」

「それで、その宣戦布告って何なんだよ、大水木
「今日の午後12:00、今から約3時間前突然国内のテレビ放送が電波ジャックにあった訳、その時テレビに映っていたのは自らをアザミ教会の"教祖"と名乗ってね…」

「ふーん、あのカルト宗教の教祖か…」

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  • 47
    ちゃむがめ 2021/07/01 (木) 20:58:36 修正 >> 46

    ――――――――
    ―――――
    ――…

    「ザザッ…ザザザ…あっ、繋がった」

    突如通常のテレビ放送から切り替わる、電波ジャックの影響によりノイズが走る画面の中に確認できるのは薄暗い打ちっ放しのコンクリートと思われる一間、カメラの前には赤いフードを被った紫髪の特徴的なボブヘアーの女性が木製の椅子に腰掛けていること。

    「ザザッ…皆さん、初めまして、私はアザミ教会教祖、茗夢遊戯(ノリユメ アソビ)と申します。」

    茗夢と名乗った女は淡々と続ける。

    「皆さんは断片(フラグメント)という存在をご存知でしょうか?」
    「世間では…手品(トリック)やお伽噺(とぎばなし)出鱈目(デタラメ)、或いは科学ではまだ解明されていないブラックボックスとして…まことしやかに囁かれているその存在、国は以前(おおやけ)断片(フラグメント)の存在を真っ向から否定しました…」

    次の瞬間茗夢は血相を変え開き切った狂気の(まなこ)をカメラに映す。

    「今から私がその脆弱な主張を、この身を以て覆しそして証明してみせましょうじゃありませんか、"断片(フラグメント)"の存在を!」

    そう言うと彼女は(ふところ)からナイフを取り出しその刹那、自身の手で己の首を掻っ捌いた。
    返り血がカメラのレンズに付着し茗夢はそのまま糸の切れた操り人形(マリオネット)の様にその場に崩れ落ちた。

    この「突然気の狂った女が己の手で首を掻き切る狂気のショー」が電波ジャックによって何十万世帯の家庭のもとへ届けられ、画面の前の彼らが阿鼻叫喚の相を成しているのは想像に難くないことだろう。

    しかし、この"狂気のショー"は画面の前の誰もが予想しなかった奇妙な展開を迎える事となる。

  • 48
    ちゃむがめ 2021/07/01 (木) 22:12:02 修正 >> 46

    頸動脈を切断したことによる失血により即死したと思われた茗夢の彼女の亡き骸が突如、電流が流れたかの様にビクビクと痙攣を始める。
    次の瞬間彼女の身体は再び起き上がり、掻き切られた筈の首の頸動脈は凄まじい速度で再生し、やがて頸動脈を皮膚が覆い元の様相を見せる。

    「如何でしたか、私はこの断片(フラグメント)を"堕胎戯曲(ファウスト・リグレット)"と呼んでいるのですが…それは今は超どうでもいいのでさて置き、皆さんの中にも私と同じ様に神の力の断片、断片(フラグメント)を持つ断片者(フラグメンター)と呼ばれる者達が人間社会に溶け込み姿を潜ませています、それは何故か…」

    「国は我々断片者(フラグメンター)を恐れ、その存在を秘匿しているからなのです。この国の体制を作り、既得権益を貪る彼ら権力者達にとって我々の持つ未知なる力はこの国の根幹をも揺るがしかねない恐るべき不安材料なのです。そうして彼らは現在秘密裏に各都市で"治安維持"と称し、
    "断片者(フラグメンター)達の回収"を行い我々の同胞の拉致、誘拐を行なっているのです。囚われの身となった同胞達はその後どうなったか、その力を封じる為に幽閉されたまま生涯を過ごすのか、はたまたその力を国の管理下のもとに利用され搾取され続けているのか、それらは我々教会の力を以ってしてもとうとう知る術を見出すことはできませんでした。」

    「…これがこの国の現状なのです、神から力を賜りし我々断片者(フラグメンター)が排斥され、断片者(フラグメント)を持たない悪しき権力者が跋扈する。ならば我々は、今こそ剣を取り革命を起こすべきなのではないでしょうか!"神の力の断片"を持つ我々こそが真に救世を行える唯一の存在なのだから!」

    「今こそ我々はこの断片(チカラ)を使う時なのです、断片者達(フラグメンター)が虐げられる時代が終わりを告げる時が来たのです。来たる7月3日を革命の日とし、我々アザミ教会はミーバネルチャの各主要都市、東部街(イーストシティ)北部街(ノースシティ)西部街(ウェストシティ)、そして…中央街(セントラルシティ)に置かれたミーバネルチャ治安管理局の支部並びに本部に対し我々は"洗礼"を行う。」

    「もし、我々の志に賛同するという隠れ断片者(フラグメンター)、もしくは親しい断片者(フラグメンター)を庇護したいという非断片者諸君が居るというなら、私達教会は如何なるときでも拒みません。その手を取り同志として寛大な心で迎え入れましょう。」
    「それでは皆様、7月3日、革命の日にまたお会いしましょう、それでは皆さんご機嫌よう〜、バイバイ〜」

    映像はそこで途切れ各局は皆「しばらくお待ち下さい」という旨のテロップを挟み番組は一時中断された。