天台の「円融三観」を学ぶにあたって知っておくべき用語に「従空入仮観」がある。
「入仮観」とあるので仮観の事をいっていると勘違いしがちですが、これは円融三観の「空一切空」のことを指して言う言葉です。
智顗は『摩訶止観』の中で「従空入仮観」を次のように説明されております。
従空入仮観を平等観と名づくるは、もしこれ空に入らばなお空のあるべきなし、なんの仮にか入るべき。まさに知るべし、この観は、衆生を化せんがために、真にあらずと知って方便して仮に出ずるが故に従空といい、薬病を分別してしかも差謬なきが故に入空というなるり。
なぜこれが「空一切空」のことを言っているのかと問われれば、それはこの文に続く次の文に依るところとなります。
平等とはまえに望めて平等と称す、前の観は、仮の病を破して仮の法を用いず、ただ真の法のみを用う、一を破して一をを破せざればいまだ平等となさず、のちの観は、空の病を破してかえって仮の法を用う、破用すでに均しく異時あい望む、故に平等というなり。
ここで智顗は三種三観の九品(別相三観)を三三九諦の相で開くことで通相三観とし、それを仮一切仮・空一切空・中一切中で展開する「三種の不思議解脱(円融三観)」の実慧の解脱(空一切空)を説いております。
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<別相三観と通相三観>
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こちらで智顗のこれらの説明文の意味するところをわたくし法介が詳しく解説しておりますので、宜しかったらご覧ください。
13.破用平等(因果俱時)
https://sinnyo.blog.jp/archives/19793202.html
ここで言う〝平等〟とは『唯識』で説く大円鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智の「四智」の中の平等性智を言います。
智顗は「妙法蓮華経」の経題を『法華経』如来神力品第21の結要付嘱の文を依文として『五重玄義』を立てております。それを日蓮大聖人が『十八円満抄』の中で更に詳しく解説し、次のように示されております。
<仏意の五重玄>
妙=仏眼:第九識は法界体性智
法=法眼:第八識は大円鏡智
蓮=慧眼:第七識は平等性智
華=天眼:第六識は妙観察智
経=肉眼:前の五識は成所作智