登場曲は「ロマンスの神様」…上司を喜ばせるファイターズ・万波中正選手の“圧倒的部下力”
『ロマンスの神様』がドームに響き渡る。
♪勇気と愛が世界を救う♪
この出だしを何度カラオケで歌っただろう。そして思う。努力と笑顔はファンを救う。そう思わせてくれるのは高卒3年目の万波中正選手の姿。1993年のヒット曲が2000年生まれの選手の登場曲として流れている。
「このくらいの時代の曲が好きなんです」
彼と初めて話をしたのは2軍の試合が北海道で行われた2年前の夏だった。
万波選手、ルーキーイヤー。2軍の試合が行われる球場はロッカールームも広くなく選手の控え場所があちこちになることも多い。その日も廊下で何人かの選手が着替えや道具の入れ替えをしていて、万波選手は出入口そばのベンチでスパイクを整えていた。私が他の取材を終え、出口に向かって彼の目の前を通り過ぎようとしたとき、彼のイヤホンから懐かしい曲が漏れてきた。あ、これはだめだ、声をかけないわけにはいかない。
――失礼します、HBCラジオの斉藤と言います、少し質問してもいいですか?
「はい! こんにちは!」
私は選手の、主にルーキーのこの「こんにちは!」に弱い。まだまだ学生時代の名残、外から来た人、知らない人にもきちんと大きな声で挨拶をするという約束事。この時の万波選手はまだ5分の1くらいは高校生が残っていた。
――あの、その曲、どうして聞いてるんですか?
「あ、このくらいの時代の曲が好きなんです、中森明菜さんとかも聴きます」
――お母さまの影響ですか?
彼のお父さまはコンゴ共和国出身の方なので敢えて「お母さま」としてみた。
「いや、別にそんなことなくて、自分が好きなだけです」
私は驚いた、その時、聞こえていたのはチェッカーズの『星屑のステージ』だったから。
私の青春ど真ん中。そのど真ん中をその時には生まれてもいない選手が「この時代が好きなんです」と言う。何だか嬉しくなってしまってそれからは彼の登場曲にも注目した。
(以下省略)