おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 227

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村雨の夫 2017/07/24 (月) 20:45:32 修正

【夏休みを迎える前に(1)】
「うーん…決められない…」
「これもいい、これもいい。こっちもいいわね…」
「ほゎ…きれー」
タブレットを撫でるたび現れる、少しづつ違った表情。照れ、自慢、驚き、笑み。どれもが切り取られた輝かしい一瞬だ。
「なぁ、もういいだろ?はやく決めようぜ?」
悩む僕ら三人の周りをうろうろして、手持無沙汰の朝霜は若干の呆れすら滲ませている。涼し気なワンピースがふわり、空気を含む。
「早く決めないと、ほら、青葉さんにも迷惑だろ?」
「ってゆー、朝霜ちゃんのヤレヤレ顔も激写~っ」
「うわっ!?」

以前の舞台で謎の新人子役としてデビューした三人は、招待公演で訪れたお偉方とSen…川内の不用意なラジオでの発言もあり、いつの間にか同じ事務所の秘蔵っ子扱いになってしまっていた。川内自身、その物言いを(笑いながら)反省したようで、改めて彼女の事務所やウォースパイトの劇団、航空会社や出版社など諸々との関係はないことを明言。これにて騒動は落着するはずもなく、謎は加速し人々の水面下で燻っていた。どこの誰が、なぜあの場に?肝心なところで馬鹿正直すぎるのは美点でもあるが、今回は少し、複雑さを加速させたらしい。
もちろん同級生やそのご家族の方々は知っているのだけれど、幸いご配慮いただけたのか、リークの類もない…少なくとも、うちや雲龍さんちに直接何かが届いたり、ということはない。平穏でいいことだ。

なんだかんだと細々した経緯を振り返ったところで、人は全く忙しなく今と未来を見ている。このまま七十五日が過ぎ、ほどよい形で噂もお仕舞いだと思っていた、春のこと。飛龍さん――「宝石」の陣頭担当者――から届いた一通のメール。曰く、旅をイメージした写真を撮りたいのだと言う。写真もまた本領の青葉が取材の旅から帰ってきた折でもあり、タイアップ企画写真の夏編が撮影される運びとなった。

……それからしばらくして、青葉が我が家にやってきた。全員集合はともかく、ソロバージョンは本人に決めてもらうのが一番とのことである。取材用具はアナログ派でもあるが、新しい物好きな部分もある青葉は、妹に劣らずタブレットを使いこなす。するりするりと、各候補を見せてから「それじゃーあとは皆さんで決めてくださいっ!」と言うだけ言って、タブを渡してきたのだった。

「青葉さん、これ見てもいいか?」
「んー?気になる?どうぞどうぞ!」
「おぉ、すっごい山!ここも今回の企画で?」
「そうですよぉ。ところで、自分の写真は決めなくていいの?」
「……なんか、改めてみると恥ずかしくって。あたいだけど、あたいじゃないみたい」
「そぉ?……なら、カメラマン冥利に尽きますね」
「…?」
「……うん!朝霜ちゃん、こういうの好きなんじゃない?南国の無人島なんだけどねーっ」
「おぉー!」

「これでどうだろう」
「そうね、これが一番」
「睦月もこれでいいとおもいまーす!」
気が付けば朝霜と青葉は、旅の思い出話に花を咲かせていた。うろちょろしていたはずなのに、二人が腰を据えるくらいには時間をかけていたらしい。
「お、これですかぁ。いいの選びますねー」
「そりゃ、うちの朝霜は素材がいいからね」
「なんですか、青葉の腕もあってこそですよ!」
「わかってるわよ、ぐっじょーぶ!」
「じょーぶ!」
「睦月ィ、それ意味わかってんの?」
「わかってるもん!」
「あはは、将来有望ですねぇ!」

結局、選んだのは浴衣で飴を弄ぶ一枚だった。もっと静々としたドレス美人の一葉も、弾ける笑顔で冒険する一葉もあったけれど、自然な可愛さ+α、少しだけ大人っぽい雰囲気をまとったバランスが、「今の」「朝霜」だからこその彩と感じた。一瞬を切り取る写真だからこそ、そういう繊細な個性を大切にしたいものだよね。

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    村雨の夫 2017/07/24 (月) 20:45:52 >> 227

    そんなことがあったのも、もう一か月以上は前。夏休みの旅を誘うポスターなのだから、6月ごろから掲示されるのも当然だ。夏休みに入った今、朝霜に誘われて旅に出たような家族もあるのかな。グラーフ氏や劇団の役者、飛龍さん(着ぐるみ)版のポスターも同数刷られたそうだけれど、子役から一人だけ選ばれた朝霜だからこその効果もあったと信じたい。皆様の反応を見るに、謎は再燃すれど身バレも起きていないようだし、よかったよかった。

    朝霜らしさと、その中に眠るポテンシャルが輝いた写真撮影会。元気娘か、美人か、その中間か?プリントしてもらった最終候補を見比べて思う。今と未来が見え隠れする、写真の妙ともいうべき三枚。この子は、どんな風になるんだろうね?
    「きっと、悪いようにはならないわ」
    「そこはまったく、おっしゃるとおりで」
    明るい未来へ、暑い夜。