意外な言葉をミヨシの口から聞き、泉光院は驚いた。
「あ、あの、今日が何の日かご存じで…?」
「店で催しをするとかで、毎年ヤエがうるさくてな。さすがに覚えた」
泉光院は、予期せぬ事態に戸惑っていた。
それでも一歩踏み出すと、お辞儀のような姿勢で袋を差し出した。
「先生、これは私が、日頃のお礼としてご用意しました」
「私に?」
「お口に合わないかもしれませんが…」
ミヨシの目が、じっと袋を見据えている。
うつむいている泉光院には、わずかな時間が永久にも感じられた。
するとミヨシは、袋を取って無造作に開け、中身を数個つまんだ。
そして、それをまとめて頬張ると、ゆっくり噛んでから飲み込んだ。
呆然とする泉光院に、ミヨシが正面から向き合う。
「うまいな。たまにはこういうのも良いもんだ」
明るく笑って、泉光院の頭に手を置いた。
嬉しいような、泣き出したいような感情がこみあげて、
泉光院は、ただ顔をくしゃくしゃにするしかなかった。
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