ヤマノスしゃべり場

SSスレ / 82

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西の空が色づき始める頃、泉光院は橋のたもとにいた。
川面を見るともなく眺めながら、あれこれと考えを巡らせる。
(あくまでキツネの推測…だが、もし機嫌を損ねてしまったら…)

いっそ投げ捨ててしまおうかと、袋を大きく振りかぶった。
しかし、やはりためらわれた。
風に舞った枯れ葉が、川に落ちて流れていく。
袋を胸に抱き、もう何度目かもわからない溜息をついた。

「おお、泉光院!」
不意に、背後から声をかけられた。
びくっとして振り返ると、見回りを終えたミヨシが立っていた。

泉光院は笠を脱ぎ、会釈する。
「先生…お、お疲れ様です」
「ん、何を持っているんだ?」
墨染とは不釣り合いな袋に、ミヨシが反応した。

「えっと、これは…」
泉光院は答えに窮したが、屈託のない様子でミヨシが言う。
「ああ、貰い物か。バレンタインとやらの」

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