戻ってからというもの、アグリコはひたすら看護を続けた。
智恵を借りようと、思兼神が祀られる神社を訪ねたこともある。
良薬があると聞けば、眷属や与次郎に走ってもらった。
とりわけ、一人の少年が熱心に手伝ってくれた。
まだ修行中の身だが、ここ最近はよくお沢の側に控えていた。
相討ちとなった師を必死に山まで運んだのも、この少年らしい。
三日目の早朝、力水の前で、少年が昏倒していた。
「休息はきちんと取ること。いいわね?」
アグリコに叱られ、少年は神妙な顔でうなずいた。
当のアグリコは、ほとんど不眠不休だった。
容体そのものは、かなり安定してきた。
遠からず、動けるようにもなるはずである。
しかし、このままでいる方が、お沢には幸せなのではないか。
アグリコは、そんな思いを禁じ得ない。
生き延びたお沢は、やがてまた戦い、傷つくだろう。
「ずっと…繰り返すの?」
そうつぶやくと、アグリコはお沢の横で仮眠を取った。
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