正徳の頃、杉宮の地に、アグリコはふらりと現れた。
それ以来、村の家々を助けて回り、非常に喜ばれていた。
村人たちと生活を共にして、もう五年になる。
一介の神に過ぎぬアグリコにとって、お沢は頼れる頭だった。
杉宮に居座った理由は、その膝元という点が大きい。
お沢もアグリコの評判を聞き、目をかけていた。
そうして、二人は親しくなった。
ただ、付き合いを続ける中で、お沢への印象が変わってきた。
荒事となれば、お沢は誰よりも先に飛び込んで行く。
ゆえに生傷が絶えず、時にはひどい怪我を負うこともある。
その度に忠告するのだが、行動を改めようとしない。
まるで自分の外見どころか、命にすら頓着がないようだった。
このままでは、いつか大変なことになるのではないか。
アグリコは、気が気でなかった。
「とにかく、もう危ない真似はよして」
そう言ったアグリコに、お沢は詰め寄った。
「体を売るのは危なくない、とでも言うつもりか?」
アグリコが、はっと息を呑んだ。
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