「怖いよね?なんとか言いなよ」
「…怖くねえ」
つぶやくような声だが、はっきり聞こえた。
事実、怯えも暴れもしないシロに、タタラは苛立った。
「は?嘘だね」
「おめえは、怖くなんかねえ」
今度は、まっすぐタタラを見て言った。
それが一層、タタラの感情に火を付けた。
「ふざけるなッ!私は鬼だ!恐ろしい果無の赤鬼だ!」
タタラが、思い切り顔を近付けて威圧した。
しかし、シロはひるまず、正面を向いている。
「怖くねえ!」
「もういい!あんたを殺すぐらい、わけないんだ!」
業を煮やしたタタラは、シロの首に手を掛けた。
「そして、パインの下へ帰る!」
タタラが手に力を込める。
それでもシロは、眉一つ動かさずに言った。
「だったら、なしておめえは、泣いてんだ?」
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