やや年かさの少年が、気まずそうに俯いた。
「ちいっとふざけてたら、飛んでっちまって……」
少女の頭を撫で、懸命になだめようとしている。
恐らく、この少年が“犯人”なのだろう。
「サガッてイろ」
男は足を引きずりながら、ゆっくりと木の真下まで進んだ。
すると、一瞬で木の枝に跳び上がるや、毬を手に降りてきた。
その間、枝は微動だにせず、葉の一枚すら落ちることはなかった。
男が、少女に毬を差し出した。
「ホラ、もう飛ばすナヨ」
男の顔は包帯で覆われ、表情など読み取れない。
しかし、隙間から覗く右目は、笑っているようだった。
少女は、嬉しそうに毬を受け取った。
「ありがとう、おじさん!」
子供たちは口々に礼を言うと、どこかへ駆けて行った。
その姿が見えなくなるまで、男はじっと見送っていた。
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