アオは、突然、体の内側が熱くなるのを感じた。
なぜか右目の視界は遮られたが、全身に力がみなぎっていた。
「これは…」
「長くは持たんで。決めや!」
アオは立ち上がり、猪の方を鋭く睨んだ。
雷のような速さで距離を詰め、そして、跳んだ。
「ウラアアア!」
アオの右足は猪の牙を蹴り砕き、顔面に深々と食い込んだ。
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「天目一箇神の、分御霊かあ」
地べたに座り込んだアオが、驚きの声を上げた。
「そっちこそ、蒼前さんとは思わんかったわ」
ハジメは、懐から取り出したハート柄の眼帯を付けた。
「それにしても、すごい神懸りだったな…」
神の神格をまとう神懸り――その力でアオは猪を倒したのだ。
「さっきは蹄鉄を通じてうちの神格を貸したけど、
専用の神器を作れば、もっと強うなるはずやで」
アオは顔を輝かせた。
「そういうのをオレは教わりたいんだ!早く案内してくれよ!」
「うちら怪我人やん。も少し休憩して…」
渋るハジメを強引に背負い、アオは威勢よく駆け出した。
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