アオとハジメは、田舎道を北へ向かっていた。
「へえ、わざわざ秋田から。お願いでもするん?」
「まあ、そんなところ」
故郷のこと、道中のこと、アオの話をハジメは興味深く聞いていた。
「しかし、割と外れた場所にあるんだな」
周辺は緑が多く、田畑もあちこちに見える。
「てっきり町の中心に建ってると思ってたよ」
アオがそう言うと、ハジメは複雑な表情をした。
すると、前方の藪が分かれて、一頭の猪が現れた。
「あれは」
「ここらでは珍しいもんやあらへんよ。けど、刺激せんように…」
その言葉が終わらぬうちに、猪は二人に猛進して来た。
「ハジメ!」
アオはハジメを突き飛ばし、自分も身をかわした。
猪はすさまじい勢いで通り過ぎる。
牙がアオの足をかすめ、ジーンズの太ももが裂けた。
「な…なんで…」
草の上に転がったハジメが、放心している。
アオは、猪の異様な雰囲気を感じ取った。
(妖か)
通報 ...