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たまのす掲示板 / 605

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玲子 2021/04/25 (日) 19:52:01 修正

今日の妄想。原作準拠関係Ver.「看病イベント」アグリコ×お沢

まるで生まれたばかりの赤子の面倒を見ているようだ。
アグリコは思う。

あまりに静かに眠っているから、生きているのか心配になってしまうのだ。
自分が普通の狐で、子育てをしたのはもう遠い昔。
アグリコは自分の孫子よりもはるかに長い時を生きている妖狐であり、今はこの地域の神霊の長を務めていた。
彼女のそばに布団で静かに寝息を立てているのは、数年前に常陸國からここ出羽の湯沢城に祀られた稲荷神、お沢稲荷。

お沢稲荷は最初、城の高台の五社壇に祀られ、一国一城で湯沢城が廃城になったために佐竹南家、武家屋敷の鬼門を守るようになった。この戦神の出世稲荷は武術に優れ、その厳しく近寄り難い雰囲気は、士族は庶民と違うと感じさせた。またその美しさもあいまって、氷で出来ているのかと思えたものだった。

そのせいかアグリコも挨拶はするものの、きちんと話したことはなかった。

杉宮のアグリコのもとにケガをしたお沢が運び込まれた時、彼女は首を噛まれて瀕死、意識不明だった。骨や神経は幸い傷つかなかったようだが、鋭い歯で深く傷つけられて出血がひどかった。
傷口をよく洗い、血を止めること。できることはそれぐらいだった。
アグリコは眷属に指示を出し、霊酒と神薬を手配した。

寝ている時はあどけなく見えるのも、子どものようね…。

戦国時代からの神に対して思うことではないのかもしれないが、事情をお沢の弟子から聞き、彼女に対して見た目と態度で偏見を持っていたのかもしれないと、アグリコは反省していた。

神薬を持ってきた薬師は「患者の自己治癒力で生還してもらうしか助かる術はない」と言った。
だが意識を失ったものへ、ものを飲ませることは難しい。
呼吸をする気道が優先されているため、そちらに入って窒息する可能性があるのだ。
最初は霊酒を綿に含ませて唇を濡らした。
目は覚まさないが、飲む兆候が見え、青ざめた顔色に生気が戻った。
霊酒の効果に驚くとともに、もっと飲ませてたくなった。自分の口に含み、お沢の口に合わせ、反応を見ながら霊酒を流し込む。
意識のないのが不思議なくらい、すんなりと飲んだ。
それから朝夕と霊酒と神薬を飲ませた。
自己治癒力一つなのだろうか、完璧に人に化けていたお沢の体は、日に日に傷を守るように狐の獣毛が肌全体を覆いはじめた。

神薬を飲ませると、霊酒と違ってお沢は眉を顰める。
ふふっとアグリコは笑う。
「この薬、苦いわよね」
口うつしする自分の口内も苦くなるので、早く起きて自分で飲んでほしいと思う。反面、あの龍神や山神とも渡り合う戦神を自分が独り占めしているような、この時間がもっと続いてほしいような複雑な気持ちがないまぜになる。

私もだいぶ疲れてるのかもしれない。迦須子に見守りを頼んで、今日は久しぶりにあたたかい湯にゆっくり浸かって眠ろう。アグリコはお沢の髪を優しく撫でて立ち上がった。

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