ロシアがウクライナにだけムキになるのは、やはりプーチンが尋常な精神状態ではないからだと思う。その異常さが、プーチンの書いた「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と言う論文にあるというのが専門家筋の評価。マスコミの垂れ流し報道ではなく。
なぜなら、ロシアとNATOの間には、ファウンディングアクトと言うものがあり、NATOは拡大するが、核兵器、及び核兵器の貯蔵施設は前方展開しないと1997年にプーチンとNATOの間で締結している。だから、フィンランドがNATO加盟したことに対する意見を聞かれたプーチンは、何も心配することはない、と極めて真っ当な答えをしている。同じことは、ウクライナが仮にNATOに加盟した場合も条約上、同様である。
そうなると、ウクライナ侵攻は、コロナで引き籠り生活の中で書いた上記論文にある文化的な背景しかありえない。
ウクライナとロシア、そしてベラルーシと言うのは確かに区別が難しい面があり、これは日本人には肌感覚としては分かりづらい。
例えば、ゼレンスキー大統領は、ユダヤ系だがロシア語を話す家庭に生まれ、お笑い芸人をやっていたときにもロシア語で芸を披露している。ちなみにウクライナ語を話す人は、ロシア語をほぼ100%理解するらしい。一方、ウクライナ語には、ポーランド語の要素が多々あり、ロシア人がウクライナ語を理解するのは難しいらしい。ポーランド・リトアニア王国領だった影響だろう。
ゼレンスキーがウクライナ語を人前で話し始めたのは、大統領になってからで、初めのうちは酷いウクライナ語だったらしい。また、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの間で通婚はよくあるらしく、この3者を並べても区別がつかない。これが中国人、韓国人、日本人との大きな違いである。
レーニンが1922年にウクライナと言う地方を、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国として独立した行政区分としてから、ウクライナに独自のアイデンティティが発生したのかもしれないが、これがプーチンは気にいらず、レーニンの時限爆弾で70年に爆発したと言っている。
プーチンは、あくまでもウクライナはロシアの一部であると信じているわけだが、既に独自の政府や選挙制度を持つウクライナにとってみれば、大きなお世話である。
また、プーチンだけではなく、ロシア人は、核爆弾を持って自衛できる国のみが、本当の国であるという信奉があり、日本や韓国だけではなく、ドイツもいまだにアメリカに占領されていると考えるらしい。そう考えると、西側寄りにウクライナがなることは、アメリカの占領地域になるという理屈になるのであろう。
ちなみにプーチンは、いまだに日本に原爆を落としたのは、どこの国か知っているか、と日本人に聞くことがあるらしいが、それは、日本人がアメリカではなく連合国が原爆を落としたと教えられていると信じ込んでいるかららしい。
コソボ独立は、東ティモールの件と類似している気がする。ただし、コソボは国連の同意なしにNATOが介入した。冷戦終結後のNATOは、破滅国家における虐殺などの混乱を阻止するために介入し、民族自決の精神を支持するという考えだからだ。
上記の考えも西側からの考えで、ロシア人にはロシア人の考えがある。ただ、それでいちいち軍事侵攻を起こされては、世界はたまったものではないし、ウクライナもNATO加入を通じて、西側寄りの姿勢を取り、ロシアの経済圏のもとではありえなかった経済的繁栄を求める権利はあると思う。それが、今回、ゼレンスキー大統領が広島に来た目的であろう。もっとも、ウクライナの政治的腐敗や民主主義制度の不備が、ウクライナが、これまでNATOに入れなかった理由の一つなので、これも解決しなければならない。
核施設が移設されないとしてもウクライナがNATOに入った限り、ウクライナと何かあった場合NATOとの全面戦争になるというのがロシアとしては譲れない点では。これまで北欧諸国が加入しなかったのもその辺りの地政学的なリスクを配慮していたのだと思う。
また東ティモール独立の場合、国連平和維持軍をインドネシア自身が受け入れていた点において状況は異なると思う。コソボの場合、極端に言えば人権問題を理由にアメリカ・日本・韓国が中国本土を空爆後に新疆ウイグル自治区を独立させたようなもの。
核施設云々はその通り。一方、ウクライナから見れば、NATO加入による西欧化で経済繁栄を目指す独自の権利があるということ。ゼレンスキー大統領が後世から非難されるとしたら、「拙速な移行がロシアの反発を招き、〇〇年にわたる戦争を招いた」と世界史の教科書に書かれるだろうが、出版界やマスコミは、ユダヤ系が強いので、「ロシアの強引な軍事介入が、かえって周辺国の結束を強めた。プーチンは恐怖政治により、国内の支配強化を図ったが、経済の荒廃とあいまって、ロシアは衰退を早めることになった」と、ロシア革命の時のような書かれ方をするのではないかと想像する。
コソボもその通りで、国連決議なしに行動したというのが、最大の特徴。朝鮮動乱も同様。人権問題を理由にNATOが動いたのも、コソボが西欧化し、ユーロの経済圏に入りたかっただろうし、それを邪魔するセルビアは、西側の価値観では悪となる。インドネシアが東ティモールの件で受け入れたのは、良く知らないが、曲がりなりにも民主国家として西側との関係を重視したからであろうと想像する。
西側の価値観を強引に押し付けたというべきか、それとも、国連が機能していないから現実的な対処をせざるを得なかったと擁護するのか。虐殺があった時点で、人道的な介入を西側の市民は支持するだろう。国際的な独立国として認められた蝦夷共和国を明治新政府が併合した時とは、時代が異なる
あと、フィンランドがNATOに加入した時のプーチンの対応とは違い過ぎるのは、ウクライナをロシアの一部と見做しているからであろう。
フィンランドの方がロシアとの国境は長いし、国境からモスクワまでの距離もほぼ同じ。軍事的脅威だけを問題にするなら、フィンランドのNATO加入の方が脅威であるはずである