おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 137

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村雨の夫 2016/11/04 (金) 21:47:17 5c457@15b02 >> 136

風邪薬を飲んだからといってすぐに良くなるわけがなく、村雨ちゃんはまた眠りについた。
口元をマスクで隠していても、すこし覗く頬が紅潮しているのがわかる。ダブルベッドの真ん中で、ゆっくり寝息を立てていて、安らかな感じ。うなされていないのがいくらかの救いだ。うっすらと流れる汗は、拭いていいのか悪いのか。触れて起こしてしまうのは申し訳ない。だけど、ちゃんと拭いてあげないといけない気もするし、それ以上に触れてしまいたい邪な心が僕の中で鎌首をもたげる。そっと閉じられた目元は優美。透き通った肌はただただ静かで、見ることさえも罪に思わせる。だけど、あるいはだからこそ、彼女を見ていたい。触れてしまいたい。
手を伸ばして、こぼれた呻きに咎められた気がして、諦める。先に食器、洗ってこよう。

「……ん……んーっ」
「おはよ。気分はどう?」
「かなり楽よ。今何時?」
「ヒトハチ…ちょっとすぎてる」
「うっそ、そんな時間!?二人は?」
「アニメのお時間。熱も何もないよ」
「そう……よかった。晩御飯、作るね」
「何言ってんの。寝てなさい」
「……むぅ。どうするの、ピザでもとるの?」
「どうしようかなぁ。義姉さんたちは……呼んでも悪いな」
「そうかしら?可愛い姪っこに会いに来ると思うわよ?」
「ふむ、一応連絡しておくね」
「……ところで、もしかしてずっといたの?」
「わかる?」
「マスクもして飲み物持ち込んで、ノートまで広げてたらねぇ」
「病の妻を放っておけるほど薄情な夫じゃないよ」
「あら、殊勝。……本音は?」
「さみしかった」
「よろしい。てことは、掃除やお買い物は」
「……明日やるよ」
「ふふ、明日のあなたに期待しておくわ」

連絡してから一時間と空けず、非番メンバーから白露義姉さん、春雨ちゃんと海風ちゃんが食品とともにやってきた。いつもほど賑やかにならないように注意を払った結果の人選らしい。睦月と朝霜(と白露義姉さん)がお風呂に入っている間に作ってくれたのは村雨ちゃんのお腹にもやさしいおうどん。大きな机を囲んで、7人で味わう。少し咳もあるけれど、みんなと一緒にいられるくらいに元気にはなったみたいで安心した。これで元気をもらえたかな?

お腹も満ちた睦月と朝霜はいつもより早く寝かせよう。そう思ったのに、今夜はテレビで名作アニメ映画。どうやって言いくるめようかね。いっそ見させて勝手に寝落ちさせた方が早いか。
三人はどうするつもりなんだろう。娘たちに泊っていくようにせがまれて断る義姉じゃないし、断れる義妹じゃない。村雨ちゃんに似た、今朝の村雨ちゃんとは似つかない困り笑顔でこちらを見るものだから、「いてくれた方がいい」と夫婦で歓迎するほかなかった。うつしてしまわないかだけが心配だけど、とりあえずマスクで対応してもらおう。

かくして、当初の狙いよりも少し外れて、暖かく夜は更けていく。明日にはよくなっているといいんだけど。心配だから一緒に寝たいんだけど、心配だから出禁だと既に言われてしまっている。仕方がないから、娘たちの「女の城」にお邪魔させていただこうかな。

村雨ちゃんの風邪ひとつ。それだけで、僕の心はかき乱された。空間の雰囲気の話じゃないけど、僕の中身の核、なのかな。流石に核は言い過ぎだけど、大事な存在なのが改めてわかった。大切にしなきゃ、支えていかなきゃ。助け合って、生きていかなきゃ。
彼女の核に、なれるかな。

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    村雨の夫 2016/11/05 (土) 00:28:19 5c457@15b02 >> 137

    「はぁ、それにしても、風邪ひいちゃったか~。ちょっとショック」
    「いつもお疲れ様です。そうだ、今度は僕がマフラー編むよ」
    「今度、って何年越しよ。ふふ、あなたにできるかしらん?」
    「んん……頑張ります」
    「ふふ。私はあの子たちの作るから、あなたは私たちの作ってくれる?」
    「そだ、一本の長ーいの編むわ。二人用の」
    「やぁだ、恥ずかしい。なんか古いし」
    「やっぱり?」
    「……でも、いいかも。うんうん♪」
    「えっ、冗談のつもりだったんだけど」
    「たまには冗談みたいなこともいいじゃない?ねぇ」
    「わかった。編み物したことないから、教えてね」
    「いいけど、その前にお仕事よ?」
    「はいはーい!その前に、元気になってね」
    「ん、わかったわ。おやすみなさい」
    「おやすみ」