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精神障害理由に会議傍聴など禁止、全国で333件 条例見直されず

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全国の自治体や公的機関が策定した条例や規則に、精神障害を理由に会議の傍聴などを制限する条項が1月31日現在、少なくとも333件存在していることが市民団体の調査で判明した。障害を理由とした不当な差別的取り扱いは障害者差別解消法が禁じており、市民団体の指摘を機に多くの自治体が削除に動いている。専門家は「基本的人権の侵害で、条項の存在は『うっかりしていた』では済まない」と指摘する。2016年施行の同法は、行政機関や事業者が、障害を理由とした差別的な取り扱いで障害者の権利や利益を侵害してはならないと規定している。精神障害者の相互扶助などに取り組む市民団体「心の旅の会『市民精神医療研究所』」(浜松市)は22年6、7月に調査を実施。インターネット上で公開されている例規集を基に、約1700の市町村や消防などの広域行政機関、行政委員会などの条例や規則を独自に調べたところ、同7月末時点で会議の傍聴などを制限する条項が少なくとも460件確認できた。調査状況を踏まえ、同研究所は22年6月から、関係省庁や件数が多かった道県などに条項の撤廃を要請。文部科学省は23年1月、同法を踏まえ「障害を理由とした差別はあってはならない」として都道府県教育委員会などに条項の見直しを求める通知を出したほか、総務省も同9月に都道府県などへ同様の通知をした。その後、同研究所は23年12月から自治体の見直し状況などを再調査。24年1月31日時点でも、266の自治体と44の広域行政機関の条例や規則で、精神障害を理由にさまざまな行為を制限する条項が333件あった。当初の460件のうち6割弱の267件で条項が削除されていた一方、新たに140件見つかった。333件の内訳は、保育所などの利用制限が88件▽教委の会議傍聴の制限が85件▽自治体などの議会傍聴の制限が43件――など。ただ、同研究所が調査できた範囲での結果になっているため、実際の件数とは異なる可能性はある。制限条項を見直した自治体のうち、北海道秩父別(ちっぷべつ)町教委は傍聴人規則の条項で「知的障害があると認められる者」の傍聴席への立ち入りを禁じていたが、道教委の要請を受けて23年1月に削除。熊本県御船(みふね)町教委は傍聴人規則に「ふうてん者(精神状態が正常でない人)、精神病者と認められる者は傍聴を許さない」などとする条項があったが、同8月に削除した。御船町の担当者は「見直し前は、傍聴人規則の内容を詳しく把握できていなかった」と明かす。長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)町議会は、傍聴規則で傍聴席に入れない対象者として「精神に異常があると認められる者」を挙げていたが、同9月に削除した。町議会事務局の担当者は「条項の存在に気付いていなかった。県の指摘を受けて不適切だと判断した」と説明する。一方、警視庁の「庁舎管理規程」には立ち入り禁止の対象として「精神障害者、泥酔者等で、公務を妨害し、または他人に迷惑を掛けるもの」を挙げる。警視庁は毎日新聞の取材に「公務を妨害する者の立ち入りを禁止するもので、精神障害者であることをもって禁止するものではない。規程の運用に当たっては、障害者差別解消法を踏まえた対応を取っている」などと説明する。
◇社会が目を向けてこなかった結果
元静岡県保健所職員で同研究所事務局の寺沢暢紘(のぶひろ)さん(78)は「制限条項が多く残っているのは、精神障害者への無理解や無関心が長きにわたって存在していることの表れだ。大きな人権問題として捉えるべきだ」と指摘する。

ハンセン病の元患者らが国の強制隔離政策で人権を侵害されたと訴えた国家賠償請求訴訟の原告弁護団共同代表で、精神障害者の差別問題に詳しい八尋光秀弁護士(福岡県弁護士会)の話 議会を傍聴させないのは主権者として認めない、教育委員会を傍聴させないのは公教育に関与させないということであり、基本的人権の侵害だ。ハンセン病患者らと同様、強制入院制度などで精神障害がある人を隔離してきた国の政策が、こうした差別や偏見の根底にある。制限条項が残ってきたのは「うっかりしていた」では済まされない。精神障害者の存在や当事者の悲しみに社会が目を向けてこなかった結果だと重く受け止めるべきだ。

(2024.3.4 毎日新聞)

オフィスタ
作成: 2024/03/04 (月) 11:58:42
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