だが。
「でも……仕方ないんだ。
ごめんなさい──おうどんさん」
そんな呟きと共に、「公開」を押した。
すぐにつくコメント、コミュニティにあふれる「辞めないで」の文字。
彼は後悔した。
やるべきではなかったと、後悔した。
しかし取り消せない。一度書いたことを、撤回することはできない。
「無能運営」がMiiverseをやめると決心した時も、こんな思いだったのか、と理解した。
彼は嘆き、そして恨んだ。
「あぁ、どうか戻ってきてくれ。
貴方がもしも 今もいたのなら、自分がこんなに辛い思いをすることは無かったのに」
と。
彼が運営者になったのは、半ば不可抗力だった。
いつの間にか運営者はいなくなっており、難民キャンプは荒れていた。
違反投稿があっても、運営者がいないから消せない。違反者を排除することもできない。
だから彼が立ち上がった。
一時 運営側に立ったことがあったからだ。
彼は新たな管理人となり、難民キャンプを運営する立場へと変わった。
おうどんさんは今、どこで何をしているのだろう、と彼はいつも考えている。
勉強が大変なのだろうか。
はたまた 就職して、仕事が大変なのだろうか。
そしてこれは考えたくもないことだが──逃げたのだろうか。
……ありえる話だ。
実際、類似サイトの MiiverseNEOがそうなのだから。
NEOの管理人は逃亡し、行方不明。
運営者の「NEO 7」も、後を追うようにいなくなった。
そして サイトの方はというと、消滅した。
NEO 7の誰かの裏切りにより、削除と編集パスワードが公開され、全投稿が削除された。
新しく投稿しようにも、作ったそばから削除されるのだから、誰も使わなくなってしまった。
さらに追い討ちをかけるように、誰も投稿できなくしてしまったから、ハリボテと化した。
……そして数日前、消滅が確認された。
「NEOの二の舞にならないように」。
そう思っていたのに、どこで間違えたのだろうか。
ついにその時はやってきてしまった。
難民キャンプ、最後の日だ。
「辞めないで」「まだやりたい!」「ありがとう……。」
ものすごい速さで増えていく記事たち。
残り10分となったとき、彼は編集ページへと移動した。
51、52、53、54、55…………。
最後がどんどん近づいていく。
そして、 59 の文字が 00 に変わったその瞬間、彼はサイトを閉ざした。
もう誰も見ることもできないそのページを見つめながら、彼はぽつりと呟いた。
「ありがとう──Miiverse。」