「あーあ。」
終わってしまうのか。
ため息混じりに呟いたその声は、暗く 悲しそうだ。
「ミバ難民キャンプ 閉鎖のお知らせ」。
その文が 見間違いでないことを理解すれば、もう一度ため息をはいた。
彼の名は「スターチス」。
かつて、難民キャンプで嫌われていたユーザーだ。
彼が難民キャンプから離れたのは、荒らしによるものではなく、かといって 嫌われることを辛く感じたわけでもない。
ただ、難民キャンプが飽きてしまった。それだけなのだ。
彼もまた、難民キャンプの最古参の一人だ。
だから、「スターチス」というキャラクターを理解してくれる人も多かった。
彼を嫌いな人が 0人というわけではないが、嫌いではない人も 多少はいた。
いい意味でも悪い意味でも、「スターチス」はたくさんの人に囲まれていたのだ。
しかし、ユーザーが増えていくにつれ、比例するように 彼を嫌いな人も増えていった。
いつしか 嫌いな人の方が多くなり、彼は難民キャンプの敵のように扱われることも増えてきた。
別に彼は好かれようと このキャラクターを作ったわけではなかったが、嫌われようと思って作った訳でもなかった。
最後には、みんながみんな、彼を嫌いになった。
そして彼は飽きてしまった。
なぜなら、何をしても否定的な意見しか返ってこないのである。
彼だって人間だ。少しくらいは認めてほしかった。
もう閉じるくらいなら、と彼は久しぶりに投稿することにした。
冷たい言葉しか返ってこないとわかっていながらも、最後だからやることにしたのだ。
あの口調も久しぶりだが、打ち方は体が覚えていた。
やはりと言うべきか、コメント欄は荒れた。
一秒間に二個くらいのペースで、コメントが増えていく。
しかしどれも、彼を貶す言葉ばかりだった。
少しばかり悲しくなりながら、コメントを打つ。
ひとつ打つたび、批判が100増える。
何をしても報われない。何をしても認められない。
「これはあまりにも、悲しすぎるじゃないか……」
彼は呟き、誰にも見えない涙を流した。
ついに最後の時がきた。
彼は今回は、慣れ親しんだ「スターチス」の方は何も投稿しないことに決めた。
名残惜しいが、残り少ない時間を、批判的な言葉を見ることに使いたくない。
いつものように 適当なアカウントを作り、変わりに使うことにした。
自分が何か投稿しても、コメントはこない。
仮にきたとしても、返ってくるのは 友好的なものだ。
久しぶりの反応に、彼はただただ目を瞑ってうなずくだけだった。
59 が 00 に変わり、難民キャンプは閉じられた。
何かのバグでまだ アクセスできればいいのに、と淡い期待を胸にURLをクリックするが、無駄だった。
本当に終わってしまったのだと、嫌でも理解した。
繋がらないページを見て、思わず彼は呟いた。
「ありがとう──Miiverse。」