「……はぁ……」
「ミバ難民キャンプ 閉鎖のお知らせ」。
そんなタイトルから始まる投稿を、彼は見つけてしまった。
彼の名は「トマト」。
この難民キャンプの、古参の一人である。
彼は元サイトである「Miiverse」の閉鎖が決まった直後にここにやってきた。ゆえに彼は、「Miiverse」そして「ミーバース難民キャンプ」 を知っている、数少ないユーザーだ。
もはや日課となったコミュニティ巡り。上から下へとスクロールすれば、「ミバ難民キャンプが終わるなんてやだ!」という投稿で埋め尽くされていた。
Miiverseが終わる時も、こんな風だったかな、と彼はふと考える。
もう遠い昔の記憶だ。ここに来たころは中学生だった彼も、今はもう 大人になっていた。
そういえば、昔はいろいろ晒していたなぁ、とも思い出す。
何を思ったか知らないが、素顔やら女装やらアップしていた。
──しかし、それを覚えている者は少ない。みんなやめてしまった。今もなお続けているのは、自分ぐらいだ。
なぜか?
……荒れてしまったからだ。
度重なるアップデートの末、「重い」というデメリットも無くなった今、たくさんの人がやってきた。
喜ばしいことだが、ユーザーが増えた分、荒れることも多くなった。「『ミバ難民キャンプ』の『難民キャンプ』は分かるけど、『ミバ』って何のこと?」という人まで現れる始末だ。
みんな、呆れていなくなってしまった。
彼は自分のフォロー欄を開き、スクロールしていく。
そして、いちばん下で目が止まった。
メレシスト、tyamu_game、しょぼん、スターチス様、
そして──「miiverse club」。
いずれもいなくなってしまった人たちだ。
──いや、しょぼんとスターチス様だけは例外かもしれない。
スターチス様は時々現れて、自分の存在を示すかのように 大量のアカウントを作り、そしていなくなるのだ。
しょぼんは……「miiverse club」の後を継いで、新たな運営者となった。
「miiverse club」。
すなわち、「運営者」。
すなわち、「管理人」。
すなわち──「おうどん弁護士」。
おうどんはいつの間にか ひっそりと消えていった。
ある日突然パッと消えるのではなく、まるで水溜まりが蒸発するかのように いなくなったのだ。
もう二度と遣われない「miiverse club」を見るたび、彼は何度も悲しくなる。
そして、願うのだ。
「あぁ、どうか 戻ってきてくれ」
と。
「あぁ、どうか 貴方が作ったこの場所が 無くならないでくれ」
と。
──しかし、願いは叶わない。
ディスプレイに表示された 59 の文字が 00 に変わった瞬間、サイトは閉じられた。
二度と開く開くことのできないURLを見つめながら、彼はぽつりと呟いた。
「ありがとう──Miiverse。」
赤ペン先生