「……あっ」
「ミバ難民キャンプ 閉鎖のお知らせ」。
久しぶりに訪れた難民キャンプで、そんな投稿を彼女は見つけた。
この記事がデマでないのはすぐにわかった。投稿したのが、運営者だからだ。
クリックし、スクロールしていけば、閉鎖のことが簡潔に書かれていた。
この記事が投稿されたのは、どうやら数日前。よく見れば、閉鎖する日は明日だった。
「……そっか……。
難民キャンプ、終わっちゃうんだ……。」
悲しそうな声で彼女は呟いた。
彼女の名は「tyamu_game」。通称「ちゃむ」。
この難民キャンプの ユーザーだった者だ。
彼女は、難民キャンプが荒れていたころ、ひっそりと姿を消していた。変わりすぎた難民キャンプに、耐えられなかったのだ。
その後、彼女が難民キャンプに戻ってきたのは、今回も合わせて三回のみ。
一回目は しょぼんが運営者になっ二回目は、サイトがリニューアルしたとき。
三回目は、今。
実は二回目の サイトがリニューアルしたとき、また復帰しようかと彼女は考えた。
しかし、それをすることはなかった。
知らないユーザー、知らない流行、知らないコミュニティ。
そして、誰も知らない自分。
自分を誰も知らなくて、自分の知っている人もいないのなら、どうしてここにいる必要があるのだろうか?
彼女はそう考えたのだ。
それからずっと、彼女は戻ってこなかった。
ふと、ニコニココミュニティを開けば、見知った顔があった。
「難民キャンプ、終わるみたいだな❕(・∇・)
まぁ、この漏れがいないんだから、潰れるのは当然だが(^_^;)」
特徴的な口調、一度見たら忘れられない顔文字……。
すなわちこのユーザーは──。
「スターチス様だ……!」
ほんの数秒前に投稿した彼の記事に、どんどんコメントが増えていく。
昔は嫌われ者だった彼も、今では人気者なんだと嬉しい反面、変わってしまったことに 寂しさを感じた。
今の彼は、どんなふうになっているんだろう。
わくわくしながら彼女はコメント欄を開くと────そこにあったのは、罵倒と暴言のみ。
彼女の知っているあの頃よりも、何倍も酷くなっていた。
「……スターチス様は、もうこんな扱いなんだ……。
一人くらい 好きな人はいないのかな。みんなが嫌いな存在なのかな。
わたしは、好きなんだけどな…………。」
三度目の訪問。
最初からいたのだから、最後も見届けたいと彼女は考えたのだ。
ディスプレイの中、 59 の文字が 00 に変わったその時、難民キャンプは終わった。
もう二度戻れない あの頃を思いだしながら、彼女はぽつりと呟いた。
「ありがとう──Miiverse。」